森本新太郎さん(福井・高志高校2年)は2022年1月、高校生向けの学習支援アプリ「quelmap(クエルマップ)」を開発し、11月にはアプリを普及させるために株式会社を設立した。アプリは高志高校の1、2年生全員に使われているだけでなく、近隣の高校への導入も目指している。高校生の若き社長、森本新太郎さんに起業までの道のりと今後の展望を聞いた。(文・黒澤真紀、写真・本人提供)

匿名で質問、先生や生徒が回答

―クエルマップは、どのようなことができるアプリですか?

生徒が勉強でわからないことを匿名で投稿し、他の生徒や先生がそれに回答できるアプリです。アプリ名は、疑問、質問の意味を持つ英単語「query」からつけました。

勉強に関することならどんな質問でもできるので、「数学の増減表について教えてください」や、「明日の国語の提出課題は何ですか」など、さまざまなやりとりがあります。

クエルマップの実際の画面。アプリをダウンロードし、ログインすれば使用可能。匿名なので気軽に使える

―生徒だけでなく、先生も参加できるんですね。どうしてこのアプリを開発しようと思ったのですか?

新型コロナウイルスの感染拡大で授業やホールルームがオンラインになったことがきっかけです。先生や友達と会う機会が減り、気軽に相談できなくなりました。

コミュニケーションツールとしてTeamsを使っていましたが、質問すると名前が表示されるので、聞きづらいですよね。そこで、「匿名で質問できるアプリを開発しよう」と思い立ち、2021年4月から構想を始め、22年1月から校内で運用を開始しました。

―現在、クエルマップはどんな風に使われていますか? 

22年12月の時点で、高志高校1、2年生全クラスの260人と先生が利用しています。運用開始以降、100件以上の質問があり、回答は150件を超えます。友人からは「職員室に行きづらいので、家から質問できて助かる」「匿名だからささいなことも聞きやすい」、先生からも「生徒がわからないポイントに気づける」と好評です。

「いいね」機能で楽しく利用

―これまでアプリ開発やプログラミングの経験はあったのでしょうか?

小学校低学年から、「Scratch」という子供向けのプログラミング教材でプログラミングを始めました。中学校のときには、科学に興味のある小・中学生を支援するために金沢大学が主催する金沢大学ジュニアドクター育成塾で学び、オセロの対局についての研究をしたり、「ロボコン」に出場したりしました。もともとプログラミングが好きだったので、クエルマップはインターネットで「アプリ 作り方 簡単」と検索して独学で作りました。

これまで蓄えてきたプログラミングの知識を活かしてアプリを制作。頭の中のイメージをノートに書き出し、情報を整理しながら進めた

―こだわったポイントは?

匿名でやり取りできることと、アプリ上での生徒間トラブルを避けるために、先生にもログインしてもらうことです。他には、既存の質問への補足や訂正、共感できる質問への「いいね」機能もつけました。せっかく作ったアプリなので、みんなに気持ちよく、楽しく活用してもらいたいと思っています。

―いろいろな機能が詰まっているんですね。開発にあたり大変だったことはありますか?

アプリを完成させるまでは順調だったのですが、「クエルマップを学校で使いたい」と校長先生、学年主任、担任の先生、各クラスのみんなにプレゼンをするのが大変でした。最初は僕の想いが前面に出すぎてしまって、アプリの長所をうまくプレゼンできなかったんです。ただ、回数を重ねるうちにプレゼンテーションスキルが上がり、説得力がついたかなと自負しています。

他校にも導入目指し会社設立

―22年11月には「株式会社quelmap」を設立したと聞きました。会社を設立したきっかけを教えてください。

僕の活動を知った父の知人が、「ふくい産業支援センターの学生起業応援事業で助成金が出るから、会社にしてはどうか」と教えてくれたからです。そこで採択されると、経済的な支援だけではなく、株式会社設立までの事務手続きや法的な手続きなどもしっかりサポートしてもらえます。起業をきっかけに、県内外の学校への導入が実現できたらと思っています。

高校生で「株式会社quelmap」起業した森本さん。時折はにかみながら、等身大の想いを語ってくれた

―モチベーションの原動力は?

やりたいことができたら、そのビジョンを浮かべてどうやればできるかを考えるうちに、どんどんモチベーションが湧いてきます。高校生というのはいろいろなことにチャレンジできる時期ですよね。僕は「失敗も楽しんじゃおう!」と思っているので、それが原動力かもしれません。