田中光莉さん(高松第一高校3年)の作品「私を辿(たど)って」を紹介します。スマホで思い出を振り返る自分自身を描いた油絵で、文化部の全国大会「全国高校総合文化祭(とうきょう総文2022)」美術工芸部門に出品されました。田中さんに作品に込めた思いやこだわった点を聞きました。(文・写真 野村麻里子)

思い出さかのぼる「私」描いた

―この作品のテーマを教えてください。

思い出をさかのぼっている私自身を描いています。いつも絵を描くときに、スマホの写真フォルダを見て何を描こうか考えています。今回はその自分の様子を表現しました。

油絵「私を辿って」を描いた田中光莉さん

―五線譜が描かれていますね。

音楽が好きなんです! 右上の2人は私の友達。思い出を振り返ると友達が一番に出てくるんです。自分の好きな物を詰め込みました。

―制作期間は?

約2カ月です。2年生の時、放課後の部活の時間や冬休みを利用して仕上げました。

肌の質感出す色を研究

―自画像の肌の質感がとてもリアルです。

人物の肌を表現するのが好きで、自分の肌がよく見える構図にし、肌の柔らかい感じを出しました。「近くで見ても遠くで見てもきれいに描くこと」は中学校の先生からの教えを反映できるよう、心がけました。

近くで見ても美しい肌や髪の質感

―色を塗るときにこだわった部分は?

普通肌に塗らない青や緑を少しずつ重ねて、透けて見えるようにしました。髪も青を入れました。黒がきれいに見えるんです。背景はたらしこみという表現を使い、油をたっぷり縫って画面を傾けて乾かす技法に挑戦しています。

―色の研究も重ねてこられたのですね。

はい。1年生のころに初めて油絵をやり人物を描きました。失敗じゃないけれど納得いかなくて……その次の作品も人物。前作よりはうまくなったけれど、なんか違う感じで。今回の作品は納得のいく仕上がりになりました。

―田中さんのように上達するにはどうすればよいでしょうか?

私は「肌」にこだわりをもって、ここまで来ました。「自分がやりたい、すごい好きなもの・世界」をもって、突き詰める過程でうまくなるのが楽しい。それが一番の上達方法です。