滋賀県のキャンプ場に高校生が開業した屋外サウナ施設「Sauna Box」がある。この施設を自ら作りあげ、運営しているのは、大阪府内の高校に通う元木博斗さん(3年)だ。元木さんにあふれるサウナ愛を聞いた。(文・中田宗孝、写真・本人提供)

サウナにドはまり、スーパー銭湯でバイト

「熱くて苦しい場所なのになぜハマるの?」

高校1年のころ、そんな興味本位でサウナへ訪れた元木さん。近年、サウナに足しげく通い、心身が「ととのう」とされる「サ活」がブームだ。元木さんは何度か「ととのう」を体験してドはまり。「これはすごくいい!」と今では週5で通うほどサ活に目覚めた。

水風呂が苦手な父親にサウナの効果を説き、同じ趣味に。一緒に遠方の地までサ活に赴いた

全国のサウナ施設をめぐり見聞を広め、趣味と実益を兼ねてスーパー銭湯でアルバイトも始めた。「ご飯がよりおいしく感じるので、夕食は必ずサウナ後と決めてます。気づけばサウナありきの生活になってました」

自作のサウナを作りたい

「高校生のうちに自分でサウナを作る」夢を抱き、高2のとき一念発起。通う高校にサウナの設置を提案した。サウナの魅力や学校に導入するメリットなどを盛り込んだプレゼン資料を作成して交渉に臨んだが、学校側の回答は実現不可。要望はかなわなかった。

iPadで元木さんが製図したサウナの完成予想図

そんな折、バイト先で出会った実業家に、サウナへの情熱や夢を語る機会が偶然おとずれた。「僕の話を真剣に聞いていただき、興味を持ってもらえたんです」。実業家の応援を取りつけたことで急展開。クラウドファンディングでサウナの建設費用を募り、設置場所は、実業家のツテがあった滋賀県高島市のキャンプ場内に決まった。

熱意で反対する両親を説得

独創的な正三角形のサウナ室の設計から建設まで、すべての現場作業に携わった。設計法は動画サイトを参考に、無料の3Dモデリングアプリを使ってサウナの設計図を描いた。「設計も本格的な建築も初めて。(サウナ建設を発注した)工務店の方々の作業に加わるかたちで一緒に作っていきました。設計図は僕のものをベースに、工務店の方が正確な図面に仕上げてくれました」

サウナの建設作業に励む元木さん

一方、両親は当初、プロジェクトに反対。「『(まだ高校生なのに)なんでそんなことをしているんだ』と。親には、クラウドファンディングで目標金額を達成したこと、しっかり計画性を持って活動していることなどを伝えました」。熱意が実り、両親をうなずかせた。

夢の実現に向かって行動する元木さんの姿に、当時2年のクラスメートたちも大きな刺激を受けたという。「服好きのクラスメートが古着屋を開業するために動き出すなど、自分の取り組みが同級生のそれぞれの夢や目標の原動力になったようです」

最大6人まで利用できるサウナの内装。酒だるを活用した水風呂も設置

昨年9月から着工したサウナづくりでは、多くの友人・知人が日替わりで作業を手伝い、総勢50人に及んだ。協力者の中には元木さんの父親もいた。「サウナ内のベンチの大きさは父と一緒に考えて作ったんです。『幅60cmにすればあぐらをかけるよね』とか」

自作サウナで汗をかいた後、水風呂を堪能する元木さん。「僕の『ととのい』は、水風呂や休憩(外気浴)に重きをおきます」

気持ち良すぎてヤバかった!

昨年12月、約3カ月間かけて製作した屋外サウナ室が滋賀県のキャンプ場内に完成。辺り一面、雪景色が広がっていた。早速サウナストーブに火を入れて体を温めた元木さんは、火照った体のまま、積もる雪へとダイブ。「気持ち良すぎてヤバかったですね(笑)。最高の瞬間でした」と振り返る。5月に営業を開始。大自然の中、「ととのい」のひとときを過ごす利用者たちに、丁寧な接客をする元木さんの姿がある。

元木さんが運営するサウナ「Sauna Box」

正三角形の見た目が特徴的な元木さんの自作サウナ

場所:「安曇川キャンプ場(アドキャン)」

営業時間:水~日 12~16時(第一部12~14時、第二部14~16時の二部制)

料金:平日税込1万円(1~4人利用時)、休日税込1万2000円(1~4人利用時)

予約・詳細:ウェブサイトから