熊本・菊池高校で昨年度から始まった地域活性化イベント「菊高ジャック」が10月に開催された。子ども向けの職業体験や地元企業とのコラボ商品の販売と合わせて行われたのが「スクール婚活」だ。学校が男女の出会いの場となり、生徒たちは参加者の恋のサポート役に奔走。スクール婚活に携わった中心生徒に、企画運営や当日の様子を語ってもらった。(文・中田宗孝、写真・学校提供)
高校生が授業の一環で婚活主催
10月、菊池高校で地域活性化を目的とした催し「第2回菊高ジャック」が開かれた。同イベントの企画の一つとして、昨年度に続き2度目の実施となった「スクール婚活」も好評を博した。
同校商業科の2020年度のマーケティング授業で「地域課題解決学習」に取り組む中、学校を舞台にした婚活のアイデアが生まれた。「少子高齢化は地元の抱える課題の一つ。当時の生徒たちと話し合いを重ね、課題解決のために男女の出会いの機会を増やそうという案が挙がりました。それが、学校での婚活イベントに発展していきました」(「スクール婚活」担当の猿渡瑠里先生)
昨年開催時は6組のカップルが成立
40人を超える男女が参加した昨年のスクール婚活では、6組のカップルが成立し、実りあるイベントとなった。高校生が婚活イベントに携わることは「生徒にとっても、結婚や人生設計を考える良い機会」と、前出の猿渡先生は話す。
「イベント協力者の婚活コーディネーターの方によると、近年、晩婚化する理由の一つは『自分の人生設計をしっかり考える年齢やタイミングが遅くなってる』のだそうです。このスクール婚活を通じて、高校生のうちから、人生のさまざまな選択肢の中に、結婚を意識づけしてもらいたい思いもあります」
商業科3年の13人が中心メンバーとなり、6月から2度目のスクール婚活に向けた準備を始めた。リーダーを務めた岡﨑青空さん(3年)に、結婚のイメージを聞くと「第2の人生」だと答える。「夫婦ふたりで一つになって家庭を築いていくので、独身時代とは考え方が大きく変わっていくんだろうなと思っています。僕自身は、婚活イベントに参加する前から将来的には結婚したいと考えてます」
今年の婚活のテーマは運動会
昨年のスクール婚活で行った調理実習やドッジボールといったプログラムを一新し、今回は話し合いの末、「運動会(菊恋運動会)」に決まった。副リーダーの米岡聖奈さん(3年)は、「いろいろな競技をしながら、かつての青春も味わってもらえる学校行事だなと。高校生も運動会で恋愛に発展することがあるんです」と話す。
「借り物競走」「フォークダンス」と、男女の仲を深める、会話が弾むような競技は何かと生徒間で考えて選んだ。参加者が興じる最初の種目は「ムカデ競走」に決まった。「息を合わせて声を掛け合うことが必要なので、参加者同士の一体感を生んで、一気に距離が縮まる」(岡﨑さん)
開催直前には商業科1・2年生8人が運営メンバーに加わり、フォークダンスのリハーサルでは学年を越えて笑いに包まれ、盛りあがった。「婚活に参加する方々、主催側の僕たち生徒ともに楽しめるイベントになるよう準備を進めました」(岡﨑さん)
生徒のサポートでキュンとする場面生まれる
20~40歳の参加者を募り、女性6人、男性6人による「スクール婚活 菊恋運動会」が開幕した。米岡さんや岡﨑さんは、積極的に声を掛けて参加者の緊張を和らげたという。
「自己紹介カードの趣味の欄をみて、どんな音楽を聴いてますか? バスケが好きなんですね、と話題をふりました」(米岡さん)。「ランチ中に話した参加者からは、『気になる人がいる。こんな機会を作ってくれてありがとう』という言葉をいただけたんです」(岡﨑さん)
TVバラエティー番組「逃走中」を倣った男女ペア競技「恋愛中」では、ある仕掛けを用意。「くじでペアを決めるのは建前で、実は、中間インプレッションで参加者の女性陣がいいなと感じた男性と組むようにしたんです」(岡﨑さん)。粋な演出も功を奏し、米岡さんはキュンとする一幕を目撃。「男性が女性を気遣いながらハンターから逃げていて、2人の距離が縮まってるなって」
生徒と女性参加者が世代を超えて女子会をしたり、参加者同士で連絡先を交換したりと、終始アットホームな雰囲気でイベントが行われたという。校舎屋上でのアプローチタイムを経て、今回は2組のカップルが誕生。生徒たちからは祝福の歓声が響き渡った。
さらに、昨年のスクール婚活で出会い、結婚が決まった20代男女を招待してサプライズ企画を実施。校長先生が神父役となり、地元産のお米を食べさせあう「ファーストバイト」を行うなど、学校を上げて祝った。