地域の特産品を使い、商業高校生とメーカーが共同開発した商品で競う「第9回商業高校フードグランプリ」(伊藤忠食品主催)の本選が11月12日、オンライン上で開催され、7校が出場。味に加え、パッケージデザインや流通しやすさなど販売の観点からも審査された。愛知商業高校(愛知)の「きしめんチップス マイルドカレー味」が大賞に選ばれた。(越沢琴奈=大学生ライター、写真・伊藤忠食品提供)

「きしめんの未来」作る商品目指して

【大賞・物流健闘賞】「きしめんチップス マイルドカレー味」愛知商業高校(愛知県)

大賞・物流健闘賞の「きしめんチップス マイルドカレー味」

毎年120キログラム廃棄される「きしめんの切れ端」をスナック菓子にした商品。すでに1万個以上の販売実績がある。「名古屋名物きしめんの未来を作りたい!」という思いのもと開発された。愛知県産小麦を使用した切れ端で、地産地消・自給率向上に貢献。より地域に根差した商品を目指し、製造会社を愛知県内へ移動予定だ。

大賞の愛知商業高校のメンバー

パッケージのデザインにもこだわりが。宮南おとはさん(3年)は「自分たちの作りたいイメージとデザイナーさんの意見が合わず、何度も作り直した」と話した。

今後は「きしめんチップスを使用した時短の料理を考案し、レシピ動画を発信したい」と考えているそう。岩本美鈴さん(3年)は「思わず話したくなるきしめんの雑学も動画に入れ、きしめんの食文化の提唱をしたい」と新たな展開への意気込みを語った。

【講評】ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点のみならず、食感、味、商品陳列時の利便性等、よく考えられていた。

海の恵み、山の恵み、栄養たっぷりクッキー

【イトーヨーカ堂賞】「のりGra <有明のり配合グラノーラクッキー>」大牟田高校(福岡県)

イトーヨーカ堂賞の「のりGra <有明のり配合グラノーラクッキー>」

有明海の豊かな恵み「のり」と畑の恵み「オートミール」を合わせた商品。のりの製造過程ででる細かい残りかすを使用している。開発時にはのりとオートミールの配合バランスや味付けに苦労したそう。パッケージデザインにはユニバーサルデザインを取り入れ、誰にでも手に取ってもらいやすくなっている。

【講評】相手を考慮したパッケージに従来と違う未来を見据えた考え方を感じた。

島の特産品、凝縮した万能ふりかけ

【DELISH KITCHEN賞・プレゼンテーション賞】「車えびレモンふりかけ」弓削高校(愛媛県)

DELISH KITCHEN賞・プレゼンテーション賞の「車えびレモンふりかけ」

弓削高校があるのは瀬戸内海に浮かぶ25島で構成される上島町。そのうちの5島の特産品を融合した商品を開発した。メインの車エビは廃棄率が55%、特に大量廃棄される頭を再利用している。他にレモン、のり、菊芋、ヒジキを使用。ふりかけとしてだけではなく、だしとしても使用できる。エビ味パスタなどさまざまな応用レシピがあるそうだ。

【講評】かわいらしいプレゼンテーションだった。料理に幅広く使える点が購買意欲につながるのでは。

廃棄増えた地元牛乳生かしたヨーグルト

【地域貢献賞】「とやまのめぐみ」富山商業高校(富山県)

地域貢献賞の「とやまのめぐみ」

牛乳とはちみつを組み合わせたヨーグルト。コロナ禍で消費量が減り、廃棄が増えた地元の牛乳を使用している。はちみつは都市養蜂に取り組む同校で作ったもの。富山の魅力の詰まったヨーグルトとなっている。牛乳の風味を生かすはちみつの量を探り、試行錯誤したそうだ。

【講評】漁業や米のイメージがある富山で、地域の牛乳・高校のはちみつを使用したことがすてき。きめ細やかな甘さがおいしかった。

特産品のブドウで育ったニジマスを燻製に

【キリンビバレッジ賞】「燻製甲斐サーモンレッド~縁(えん)~」塩山高校(山梨県)

キリンビバレッジ賞の「燻製甲斐サーモンレッド~縁~」

甲州市の特産品ワインと楽しめる商品。甲斐サーモンレッドは、ブドウの果皮で育った山梨のブランド魚のニジマスだ。うまみや味わいを生かし、ワインに合い日持ちする燻製に仕上げた。燻製用チップとしてブドウの剪定(せんてい)枝を再利用している。いろいろな人の協力を得て作られたことから「縁」という名前を付けたそうだ。

【講評】山梨県は海のない県だが、魚を使った商品という切り口にびっくりした。ぜひお酒と一緒に味わいたい。

想いをつなぐ4種の餡(あん)

【大和ハウス賞】「伊匠魂」伊東商業高校(静岡県)

大和ハウス賞の「伊匠魂」

和風クッキーで餡(あん)を挟んで食べる合わせ焼き。先輩から後輩への想いを込めた4種の餡はパンやアイス、チーズなどと組み合わせて食べてもおいしい。来年度統合により校名が変わる同校。商品には「つながることで地域は元気になる!」という受け継がれてきた「伊商魂」が込められている。

【講評】完成度の高い商品。ホテルなどでの販売を購買部に掛け合いたい。全国に発信できる商品だと思う。

まるで豆腐? ヘルシーデザート

【アサヒ飲料「カラダにピース」賞】「安来産大豆のなんちゃって豆富」情報科学高校(島根県)

アサヒ飲料「カラダにピース」賞の「安来産大豆のなんちゃって豆富」

豆乳と大豆、クリームチーズを使用した豆腐のような見た目のヘルシーデザート。安来市の大豆畑に着目し、豆腐屋やケーキ屋と協力の上開発した。商品はパティシエが一つ一つ手作りしている。人口減少や生産者の高齢化が進行する安来市、地元で作った商品を全国へ広める「地産都消」を目指しているそう。

【講評】「DELISH KETCHEN」でも人気の豆腐スイーツ。この商品は洋菓子店とコラボしていることもあり、レベルが高い。