生理にまつわる悩みは、周囲の人にはなかなか相談しにくいもの。でも、不安があるときは一人で抱え込まないことが大切です。思春期外来を担当する産婦人科医の「サッコ先生」こと高橋幸子先生に、読者の高校生からの質問に答えてもらいました。(安永美穂)

イライラの原因は女性ホルモン

高校生からの質問です。「生理中は家族にイライラして、ケンカをしてしまいます。どうしてイライラするのか、心が荒れてしまう理由を知りたいです。また、生理中にイライラしたり不安になったりしないようにするにはどうすればいいでしょうか?」

生理前から生理中にかけてのイライラや不安の原因としては、さまざまな要素が関わっているのですが、女性ホルモンの影響が大きいと考えられています。

イライラの原因は女性ホルモン(写真はイメージ)

女性ホルモンには「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があり、生理前から生理中にかけてのイライラや不快な症状はプロゲステロンの影響によるものです。プロゲステロンは排卵から生理までの時期に多くなるホルモン。受精卵がやってきたらいつでも受け止められるように、子宮内膜を厚く、ふかふかにします。このときの女性の体って、本人の心や社会的環境に関わらず、妊娠できるように準備している状態なんです。

妊娠を持続させるためには、外部から攻撃されたら体を守らなければいけません。「攻撃は最大の防御」と言われることがありますが、いざというときに体を守るには、こちらもいつでも攻撃できる体制を整えておく必要がありますよね。つまり、イライラは「妊娠したときに備えて体を守っていますよ」という、体からのサインでもあるわけです。

気持ちが爆発する前に「一呼吸」

イライラがひどいときは、「今はプロゲステロンがたくさん出ている時期だからイライラするんだな」「私が怒っているわけではなく、ホルモンのせいでイライラしてるんだな」と考えて、イライラを家族にぶつけてしまう前に一呼吸おきましょう。

「ホルモンのせいでイライラしている」と自覚しよう(写真はイメージ)

ちなみに、生理周期に合わせて毎月同じタイミングで現れる同じような症状を「PMS(月経前症候群)」といいます。PMSの主な症状は、頭痛、腰痛、腹痛、イライラ、悲しくなる、眠気、ニキビ、食欲増進、便秘です。生理が始まってプロゲステロンが減ると、ため込んでいた水分が腸管の方に流れてくるため、下痢を起こすこともあります。

低用量ピルの使用も視野に

こうした症状がひどくて困る場合は、一人で我慢せずに婦人科か産婦人科を受診してください。低用量ピルを使うと、ホルモンの増減の波を抑えることで、つらい症状をやわらげることができます。

また、イライラや気分の落ち込みといった精神的な症状がとても強く出てしまう場合は「PMDD(月経前不快気分障害)」の可能性も考えられます。PMDDの場合は低用量ピルだけでは治療が難しいケースもあり、メンタルクリニックなどで抗うつ薬を使った治療が必要になることもあります。

 
高橋 幸子さん 
たかはし・さちこ 1975年生まれ。埼玉県出身。産婦人科医。埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター所属。同大学病院産婦人科で思春期外来を担当。年間120回以上、全国の小・中・高校などで性教育の講演を実施している。