野村菜結さん(神奈川・横浜サイエンスフロンティア高校2年)は、「ネジバナ」の研究が評価され、8月に行われた「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)生徒研究発表会」で文部科学大臣賞を受賞した。日本一に輝いた研究をどう行ってきたのか聞いた。(写真・学校提供)
変わったネジバナを発見
植物分野に興味があった野村さん。高校2年生の春から研究題材を探していたところ、学校の敷地内の雑草をはじめとする植物を観察中に、変わったネジバナを見つけた。
「ネジバナは一般的にピンク色の小さい花を螺旋(らせん)状に付けますが、私が見つけた個体は花が直線状に並んでいました。観察を続けるとネジバナの花の付き方は螺旋状に限らないことに気づき、興味を持って研究を始めました」
螺旋で昆虫を引きよせてる?
まず、野外でネジバナを見つけるたびに花の付き方を観察すると、花の付き方は主に隣り合う花同士の角度が大きく、巻き付きのきついものから順に「放射状」「螺旋状」「直線状」の3パターンに分けられることがわかった。
次に、螺旋の意義を考察した。ネジバナが属する「虫媒花」と呼ばれる植物のグループは、昆虫に花粉を運んでもらい、受粉する。虫媒花にとって昆虫を引き寄せることは子孫を残す上で重要な問題なので、花びらを目立つ色にしたり、匂いを強めたりする特徴がある。
「ネジバナを観察した際も、近くに昆虫がやってくる場面を何度も見かけました」。「螺旋」という工夫を、葉や茎ではなく花にしていることから、「ネジバナは昆虫を誘引するために螺旋を描くのではないか」と考察した。
花の付き方で気流が変わる
野外でのネジバナの揺れ方の違いから「花の配置が気流に影響する」と考え、「風洞実験装置」いう装置を用いて、煙を使い気流を観察した。
模型を用いて実験すると、「花により気流が変化すること」がわかった。ネジバナの花の配置は、昆虫に対して匂いを効果的に届けているのではないかと仮説を立てた。
ネジバナが咲くのは梅雨の時期、1年のうちたった2カ月ほどだ。「私は花の研究が中心のため、1年のうち10カ月間は実物を用いての検証や観察が行えず、苦労しました」
だが、ネジバナの模型の製作に取り組むことで実験を可能にした。「模型を作ることで螺旋構造の解析が進み、ネジバナの構造への考察が深まる結果となりました」
研究を通して好奇心が強まったという野村さん。「植物や研究に限らず、身の回りの現象により疑問を抱くようになり、さまざまな面から考察できるようになりました」。好きな生物学も、研究的な観点から考えられるようになり、より楽しくなったという。