兵庫県西宮市には、市長への政策提言を目標に活動している高校生たちがいます。まちづくりに関心がある高校生で構成される「Youth委員会」では、若者の視点から話し合いを進めています。設立メンバーである長冨日向さん(甲南女子高校2年)、磯村奈槻さん(小林聖心女子学院高校2年)、角谷胡桃さん(小林聖心女子学院高校2年)の3人に10代の政治参加について聞きました。(文・写真 竹内優衣=大学生ライター)

政治の話題は「言わないでおく」雰囲気

―Youth委員会の活動内容を教えてください。

長冨さん 来年2月に市に政策提言をすることを目標に活動する、兵庫県西宮市在住の高校生24人の組織です。「環境」「教育」「社会」「にしのみや市民祭り」の4つのグループに分かれて、定期的に委員会議で話し合っています。

―政治や社会に関心を持ったきっかけはなんでしたか?

角谷さん 私の中学校では、SDGs(持続可能な開発目標)やジェンダーについて1年間を通して調べ、発表するという調べ学習の機会があり、社会問題に関心を抱くようになりました。また、子どもが亡くなる事件や事故をニュースで見て、児童虐待の問題などに関心を持ちました。

Youth委員会のメンバー。左から角谷さん、長冨さん、磯村さん(西宮市提供)

―政治、選挙、社会問題などの話題を、学校の友人と話すことはありますか?

長冨​さん 日常会話の中では、政治に限らず、環境問題もなかなか話題になりませんね。休み時間にマイクロプラスチックの話になったりはしません(笑)

角谷さん でも、学校では話さないけれど、心の中では関心を持っている人は多いと思います。「みんなが言っていないことは言わないでおこう」という雰囲気は割とあると思います。

磯村さん 私はYouth委員会のメンバー集めの際、学校で西宮市に住む子たちに声をかけたのですが、誘うまでこういう活動に興味があるって分からない子もいました。声をかけて初めて「興味あったんだ」ということを知りました。

8月に行われたYouth委員会での話し合いの様子

政治への関心を持つ若者を増やしたい

―どうしてYouth委員会を設立しようと思ったのですか?

長冨​さん 最初は「投票率の低下をどうやったら私たちが上げていけるかな」という思いから始まりました。話し合いやいろんな人の話を聞いたり、体験したりする過程を通して「政治や社会に関心を持ってくれたらうれしい、そして、そういう仲間を増やしたい」と思い、設立しました。

磯村さん 私は政治というよりも「自分たちで企画して、実行する」という過程が楽しいと感じていることから、Youth委員会の設立に関わるようになりました。今、Youth委員会では「教育」グループに参加して話し合っています。この活動を通して、私自身、もっと政治に興味がわくのではないかと思っています。

―みなさんは今どんな問題意識を持っていますか?

長冨さん 私たちはまだ選挙権がないのですが、「選挙権がない高校生でも政治には関心を持つべき」だと思っています。イギリスやアメリカでは、私たちと同年代の子どもたちが政治について話し合っているという話を聞いたことがあります。授業で習わないからこそ、「自分たちで、みんなで一緒に学んでいこうよ」という思いもYouth委員会にはあります。

真剣なまなざしで政治の話題を語りあう委員会のメンバーたち

角谷さん 各政党の違いなどを学校で習わないので、正直このまま(選挙権を得る)18歳になっても、違いは分からないと思います。

政治を考えるのは「すごくない」投票は「偉くない」

―委員会設立について周囲の反応は?

磯村さん 先生方から「すごい」って言われます。恐らく、大学1年生でこういう活動を始めても、ここまですごいとか声かけられなかったと思います。たった1、2歳しか変わらないのに。

長冨さん 確かに、みんなが関心を持つべきことなのに、持ってないから、こうして活動している私たちが「すごい」と言われるのだと思います。選挙権を持つまであと1年ほどなので、この活動は別にすごくないと感じていて。

学校が違う生徒同士、社会問題について議論

磯村さん なんかあるよね、そういう壁。この今感じている壁が10代20代の投票率の低さにつながっているのではないかと思います。このままの空気感だと、投票に行ったとしても「投票に行ったんだね、偉いね」ってなりそうです。

角谷さん 授業で習うことが大切だと感じます。授業で(もっと詳しく)習ったら、もっとみんなが興味をもつのではないかと。高校生までに(具体的に)習わないとなれば、大学生になっても知識がないので、投票に行かないとか、1票じゃ変わらないと思って行かないかもしれません。

身近なことから社会に関心を向けて

―政治や選挙、社会問題について10代の関心を高めるには、どうしたらよいと思いますか?

角谷さん 「政治」「社会問題」などの言葉だけだと「なんだか大きすぎる」もののように思ってしまうので、自分の興味があるところから広げていったらいいと思います。「ここの道路、危ないな」など、「自分の身近な所を良くしたい」というところからでも、社会に関われるかなと思います。

磯村さん とりあえず何かに興味があったら、どんなことでもやってみることで発見があると思います。政治などに、「ただ硬いイメージ」しか持っていない人もいるかもしれないけれど、私たちの活動を通して、「ただ硬いだけじゃない」ということも伝えられたら、少しは政治や社会活動が高校生に広まるのではないかなと思います。

角谷さん この活動は「高校生がやっている」ということが大きいかなと思います。少し年上の大学生の活動ではなく、同じ高校生がやっている活動だからこそ、同世代の刺激になるのではないかと思っています。