大学の授業は高校までと異なり、学生自身がどの席に座るかを決めることが普通だ。しかし、先生の話が聞きやすい「最前列」はあまり人気がなく、座ることに抵抗を感じる学生が多い。別々の大学に通う学生3人に、席を選ぶ決め手を聞いてみた。(まやか・大学1年)

「先生に見られる」最前列は厳しい

大学3年生のAさんは視力が悪いため、決まって前から2、 3列目の席に座る。最前列は先生に見られやすい位置だから、座りづらいという。「小中高の時に、前の方の座席から当てる流れがあったから、それで避けているのもあるかな。まあ大学では、先生に当てられることはめったにないけど」

荷物で座席を占領する人もいる

1番前の座席で授業を受ける学生はあまりいないという。「自分が教授なら、100人規模の教室で後ろに生徒が密集していたら寂しいけど、ケース・バイ・ケースとしか言えない。恥ずかしくて後ろに座ったのかもしれないし、どこに座ってるかでやる気は計れない」

Aさんの大学は対話形式の授業が少ない。自分が座ろうとした位置にすでに人がいる時、「その人が隣の席に座らないでほしい」というオーラを感じたら、別の場所を探すという。「面倒だなって思うけど……」

Aさんは、サボろうと思って後ろの席で話を聞いてなかったら、余計授業が分からなくなってやる気がうせてしまうことを経験した。「学習意欲の低い人は、それで差をつけられる」と認識している。

大学2年生の10月までオンライン授業だった。「やっぱり、オンラインが一番じゃないかな。対面と違って、教授との距離がみんな同じ。席のことを悩む必要がないし、先生も平等に生徒の顔が見れる」

やる気アピールはしたくない

「電車が遅延した時だけ仕方なく一番前に座る。人気がない席だし、先生に見られやすいから、緊張もする」というのは、3人の中で最も学生数の多い大学に通う、2年生のBさん。

たくさんの人の視線がある分、前に座りにくい

目立ちたくないから、後ろに座ることが多いという。300人用の教室でも、後ろにあるモニターを見られたら十分だそうだ。「前にいたら、先生に当てられる可能性も増えるし……」

授業へのやる気はあるが、前に座って先生にアピールをすることはない。「高校の時はしてたけど、大学では教授も大人数の一人として私のことを認識しているから、(アピールしなくて)いいかなって思ってる」

高校時代、多くの先生と関わりを持っていたBさんだが、「今はパソコンで課題を提出するから、先生とのコミュニケーションが減ってる気がする。レポートを毎回遅れて出したり、頻繁に研究室に通ったりしない限り、教授に認識してもらえない」

前の席は声が大きすぎる

「一番後ろの席で授業を受けていた時、ちゃんと話を聞いて教授に質問してたら、顔を覚えてもらって廊下で何回か声掛けてもらった」。そううれしそうに話す大学2年生のCさんは、30人、60人用の教室をよく使用している。

最前列は黒板が近すぎて、首が痛くなる

だいたい真ん中の辺りに座る習慣がある。「教授がマイクを使って話すから、最前列は声が大きすぎるし、コロナの飛沫のこともある。だけど、ちゃんと先生の話を聞きたいから真ん中かな」。グループでずっと固まって席を固定化させて、「それを空気で分からせる人たち」も一部いるそうだ。

教授は学生の座る位置を気にしていない。「俺はあまり友達と席を合わせることがなくて、おのおので好きな場所に座ってる」

高校は毎日決められた席に座るため、親睦を深めやすいが、大学ではそう簡単にはいかない。「大学は研究するための場所だから、友達を作るには自分で動くしかない」とCさんは言い添える。

自ら学ぶ姿勢が必要

先生から近距離で見られることが、最前列に座ることへのハードルを上げる一番の原因となっているようだ。先生の目が届きにくい後ろの席に座るなら、誰にも見られていない場所でも勉強を頑張る姿勢が求められるのかもしれない。

ドアを開けた瞬間に広がる、見渡す限りの座席。皆さんはどこに座るだろうか? 自分の選択に自信を持つことはできますか?