高校3年間は、過ごし方や選択で将来が大きく変わってしまう大事な時期。「勉強がうまくいかない」「進路が決まらない」など、悩みが尽きないでしょう。20歳で学習塾を創業し、4000人以上の生徒を直接指導してきた石田勝紀さんに、読者からの勉強や進路に関わるお悩み相談に答えてもらいました。

【お悩み】親から進路を強制されている

私の家は代々医者一家。小さい頃から私はずっと親に「看護師になれ」と言われてきました。それ以外の進路なんて。その時から私にはありません。

お金持ちは「好きなことを選べる」と言われますが、それは大きな間違いで、お金持ちであればある程選択肢は狭まっていくものだと感じています。

親から看護師になることを強制されている(写真はイメージ)

特に自分の親は自分の理想通りにならなければ厳しく批判しますし、それでどれだけつらい思いをしたかなんて、計り知れません。親の望むものは高く、ついていくのはとても酷だし、大変。何より、自分の意見を聞いてもらえないのが嫌。

現在、国公立大受験に向けて頑張ってはいますが、看護師は親の望みであって私の望みではありません。「じゃあ、何かやりたいことがあるのか?」と言われれば何もなく、夢がないんです。だから、大学を目指そうにも確かな理由がないからモチベーションが上がらないんです。

自分のしたいこと、やりたいことは今は全く分かりません。自分を見失いかけてこのままではいけないと思い、ダメ元で書いてみました。よければ返信お待ちしてます。(リカ・高校2年女子)

今、とても不安ですよね。そのようなことがあればなおさらのことです。私も高校に入ったとき、あまり勉強しているように見えない周囲の同級生たちが、とてつもなく勉強ができるのを見て、焦ったものです。このままやっていけるのだろうかと。

親の意向で進路を決めると後悔する

親の意向で進路を決めてしまい後悔しているという話を、これまでたくさん聞いてきました。また、ある男性(医師)からは次のようなメールをもらったこともあります。

「代々医者の家系で、医者になるように育てられました。しかし、医者には興味がなく、医師になった今でも親を恨んでいます。そのような背景があるため自分の子どもには本人の意志を尊重して進路を選んでもらいたいと思っています」

今でも親を恨んでいる…(写真はイメージ)

親を恨んでしまうとはとても悲しいことです。親も当たり前のように子どもの将来は医者と決めて育ててきたと思いますが、まさか子どもに恨まれているとは思ってもみなかったことでしょう。

茶道や華道、歌舞伎の世界など、代々子どもが継承していく世界もあります。そのような星の下に生まれたのだから仕方ないという考えもありますが、私が知るところでは、反発して跡を継がないということは少ないようです。

つまり、子どもが小さい頃から、親がその道の楽しさを教えてきたことが背景にあるのではないかと思います。一方で、親の意向に背く場合は、親が強制的にやらせてきたことがあると思います。

代々家業を継承していく家も(写真はイメージ)

親の価値観を変えるのは難しい

基本的には、親は子どもの特性を知り、長所を知り、それを伸ばすことが大切なのですが、人を育てる原則を知らないと、親の勝手な価値観を子どもに押し付けることになり、最終的に、子どもから恨まれたり、子どもが親元を離れたりすることもあります。

しかし、一方でこのような親の価値観を変えることは容易ではありません。思い込んでいると人はよほどのことがない限り変わりませんが、たった一つだけ変える道があります。

それは、自分のやりたいことや進路について、信念を持って「論理的」に説明をすることです。

諦めず何度も論理的に説明を

リカさんの場合は、「やりたいことがないけども、看護の道に進みたくない」という信念を持っています。そして自分の話を親が聞いてくれないのが嫌ということなので、それを親に伝えていくといいでしょう。以下に手順を書いておきますので参考にしてください。

立ち話や雑談の延長ではなく、しっかりと話をする場を設ける。その際、ご両親のうち、自分の話をしっかり聞いてくれる方の親と話す。

内容は、

  1. 自分の話を聞いてくれないことがとてもつらいこと 
  2. だから自分の話をしっかり聞いて欲しいこと 
  3. 看護の道には進みたくないこと 
  4. 進みたくない理由 
  5. 今は明確なやりたいことがないけども、それを親に決められて進みたくないこと 
  6. 自分の人生は自分で決めていきたいこと
自分の気持ちを親に伝える方法は?

これを伝えた上で、次に親の意見を聞く(特に親が看護の道に勧めさせたい理由を聞く。もし「代々医者一家だから」が理由であれば、それは理由にならないと伝える)

基本的に自分軸をしっかりとして話をすれば、話を聞き、理解をしてくれます。もし、話が平行線になれば、日をあらためて、もう1回行います。つまり理解してくれないからといって「あきらめない」ということです。

自分なりの覚悟を持って

以上が手順ですが、一方でこれだけのことをやるのであれば、自分なりに覚悟が必要です。人の言うことが聞いてそのとおりに進んでいれば楽です。それが嫌なのであれば、自分で人生を選択し、自分で決めていくことです。

そこには自己責任も伴いますが、それが人生というものです。ぜひ自分らしい人生を進んでいってください。

 
石田勝紀さん 
いしだ・かつのり 教育者。教育デザインラボ代表理事。著書執筆・講演活動を通じて、学力向上のノウハウ、社会で活用できるスキルやマインドの習得法を伝える。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば
』(集英社)など著書多数

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