藤山涼音さん(東京・日野高校3年)の美術作品「紅灯耀映」を紹介します。人気(ひとけ)のない商店街に提灯(ちょうちん)だけがこうこうと輝き、鮮やかなのに寂しさが漂うこの作品は、今年度の全国高校総合文化祭(とうきょう総文2022)の美術・工芸部門に出展される予定です。どのように制作したのか聞きました。

紅灯耀映(第46回全国高等学校総合文化祭とうきょう総文2022美術・工芸部門出展予定)

コロナ禍で生まれた景色の物寂しさを表現

―作品のテーマを教えてください。

「紅灯」は提灯の灯火、「耀映」は照り耀(かがや)くという意味です。

賑(にぎ)わうはずの街は閑散とし、提灯だけが耀きを増していました。新型コロナウイルスが猛威をふるわなければ、なかったはずのこの不思議な空間。耀きを増す提灯に照らされる街の物寂しさを表現しました。

モデルになった場所は現実にある場所ですが、どこか現実になさそうな少し夢見がかった独特の雰囲気を出せるように、実際よりも彩度を上げて現実になさそうな雰囲気を作り出しました。もの寂しい中にも彩りや豊かさをテーマに描きあげました。

鮮やかな提灯の光にこだわり

―こだわったり、工夫したりしたポイントは?

力を入れて描いたところは、机に反射している鮮やかな提灯の光です。手前の机は実際の色と全然違います。赤やオレンジ、黄色など、さまざまな色が美しく反射している様子を表現したく、きれいなグラデーションになるように描きこみました。

また「渋谷横丁」と書いてある横の暖簾(のれん)の布の質感や立体感、光の反射にこだわりました。暖簾の色自体は赤一色ですが、暖色の絵の具を混ぜて、色に深みが出るようにしました。また、あえて蛍光色の絵の具を使い、より発色が良くなるように仕上げました。

制作の様子

―何が難しかったですか?

床の砂利の質感を表現するところとコンクリートの境を描き分けるのが難しかったです。また、奥にいくにつれてどんどん細かくなっていくので、描写するのにとても集中力が必要でした。

レタリングを細かく正確に描きこんだり、並んでいる提灯に一つ一つ色をのせたりする作業も苦労した点です。

全国連続出場のプレッシャー乗り越え

―制作中のエピソードを教えてください。

日野高校美術部がすでに4年連続で全国大会に出展している中、自分たちの代で連覇を途切れさせたくないという思いは大変なプレッシャーでした。

けれど、部員たちから励ましの言葉をもらったり、先生や先輩方からのアドバイスをもらうことにより、集中して取り組むことができました。美術部以外の友達からも、制作途中の作品を褒めてもらって、励みになったことをよく覚えています。

中学生の時から日野高校の美術部の存在を知っていて、高校生になったら美術部に入って全国大会に出展したいと思っていたので、誰よりも力を入れて頑張って制作したつもりです。

制作者の藤山さん

―よい作品を作るためのコツを教えてください。

自主的に取り組んで、自分のためになる知識や技能を吸収していくのがいいと思います。

今回の作品を仕上げる前に、「自主練」という形でいろんなタイプの絵を描いて、自分の中で何が苦手なのか、どの表現が得意なのかを研究しました。

技術面だけでなく、使っている絵の具などを一から見直し、1年生の時より多く絵の具を使って鮮やかな色を表現できるように、色彩の勉強をするなどして作品制作に臨みました。