「下着の色は白とする」「ツーブロック禁止」。これらは近年話題の「ブラック校則」だ。認定NPO法人カタリバは、生徒主体で校則見直しに取り組む「みんなのルールメイキングプロジェクト」を進めている。2月に行われたイベントで、参加した生徒・先生が活動報告を行った。発表校のうち足利清風高校(栃木)ルールメイキング委員会の取り組みをピックアップする。(高槻官汰)

校則が変わると風紀が乱れる?

「みんなのルールメイキングプロジェクト」の目標は、既存の校則を非難せず、生徒主体で対話をし、より良いものへと発展させること。校則を見直し、身近な課題に気づく力、正解がない問題への解決策を導く力の育成を目指す。

イベントの参加者

足利清風高校ルールメイキング委員会は、髪型と服装の2チームに分かれて活動を進めた。髪型チームでは、ツーブロック・お団子・前髪の長さについて、服装チームでは、着用期間の廃止・防寒着・制服購入時の男女表記について見直しを行った。

先生に校則見直しへの意見を聞いたところ、校則見直しのハードルの高さが見えてきた。「校則が変われば風紀が乱れるのではないか」「将来就職する生徒もいる中で、採用試験に悪影響は出ないか」など、不安の声が多かったのだ。生徒らは地元企業にインタビューを行い、面接基準を聞いた結果を示すことで、不安の払拭(ふっしょく)に努めた。

活動報告を行う、足利清風高校の生徒ら

保護者の95%が校則見直しに肯定的

12月から1月にかけては、全校を巻き込んだ会議や保護者へのアンケートを実施した。保護者の95%が、校則見直しに対して肯定的な見方を示した。生徒らは「多様な価値観を取り入れながら活動する大切さに気づいた」「社会に出る上で、互いの個性を認め合うことが大切だと感じた」とコメントしている。

生徒の不満と先生の不安のすり合わせ

2月の職員会議には、校則改正の議案書を提出した。どうしたら生徒の不満と先生の不安が無くなるかを考え、何度も文章を推敲(すいこう)した案だったが、承認されなかった。「全校生徒を十分に巻き込めていない」「短期間での改正にこだわらず再度精査すべき」と課題を指摘された。

今後は先生からの指摘をもとに活動の改善を進めていく。服装チームの生徒は「校則改正が新年度に間に合わなくても、実際に改正することができなくても、諦めずに挑戦し続けたい」と意欲を見せた。

生徒が校則見直しを行う中、先生も声を上げ始めた。生徒指導主事を務める小瀧智美先生は、従来の校則に違和感を持ちながら指導を続けてきた。「今まで、生徒の自主性・主体性を育まない指導をしてきたのではないか」と思うようになったという。

活動報告をする小瀧先生

校則見直しの活動に携わる中で小瀧先生は、学校の中に「対話」が必要だと感じた。対話とは「反対意見も受け入れて、さまざまな価値観を取り入れながら解決策を導く」ことだ。

生徒を信頼し、理不尽な指導は行わず、対話を心がけるようになったのが、自身の大きな変化だという。今後の展望について小瀧先生は「校則見直しを検討するシステムや組織を構築し、ルールメイキングの取り組みを持続可能なものにしたい」と語った。

既存のルール、絶対視しないで

活動報告に対して「みんなのルールメイキングプロジェクト」に携わる有識者から寄せられたコメントの一部を紹介する。

弁護士の根本藍さんは、「既存のルールを絶対視してはならない」と指摘した。「日本には約2000の法律があるが、昨年だけでも64の法律が改正された。1人のSNS発信で政策が変わった事例、署名を集めて地方自治体の条例を変えた事例もある」と、疑問に思うことでルールが変わった事例を説明した。

鯖江市役所JK課のプロデュースなどを手がける若新雄純さんは、中高生に期待することとして、反対意見との付き合い方を考えることを挙げた。「反対意見に対して、安易に同調せず、けんか腰にもならず、それらとどう向き合い、考えを深めていくかが、対話やルールメイキングをする際の大切なポイントになる」と参加者に語りかけた。