高齢化、過疎化で増え続ける空き家。特に北海道など積雪の多い地域は倒壊の恐れが増し、問題になっているという。空き家の課題に目を付けた札幌日本大学高校(北海道)の2人は、ビジネスプランの全国大会で自作の音波診断装置を用いたアイデアを発表し、高く評価された。(文・写真 中田宗孝)

積雪で倒壊の恐れ…空き家問題を解決するには

地元の空き家問題を解決するビジネスをプレゼンする森山君

長い間放置された道内の空き家は、積雪によって倒壊の危険性が高まる。札幌日本大学高校科学部の仲良しコンビ・森山聖矢君と北守奏太君(ともに2年)は「木造住宅守る隊」を結成。空き家の状態を診断できる機器を活用したビジネスを提案した。

開発した音波診断装置の使用法を説明する北守君

ビジネス案のタイトルは「音波で空き家の健康を診断~この機械があれば誰でも簡単に~」。2人は、街路樹の状態を調べる機器を応用させた音波診断装置「PHC(Pillar Health Checker)」を開発した。この「PHC」は、木造住宅の柱に音波をあて、木材の健康状態を調べられる。木の内部に水分が多く含まれていたり、腐食が進行していたりすると、機器が定める正常値(木材が健康な状態)にズレが生じ、修繕が必要な老朽化した建物だと診断できるという。

「空き家の所有者は、売却できる価値のある物件なのか自己判断できない、修繕費がかさむといった悩みを抱えています。『PHC』を使えば、空き家を賃貸物件として再利用できるのか、処分すべきなのか分かります」(森山君)

ファイナリスト10校のうち3校が受賞した「審査員特別賞」に選ばれた

得意分野生かしてビジネスプラン作成

1月、高校生たちが考案したビジネスプランを競う「第9回高校生ビジネスプラン・グランプリ」(日本政策金融公庫主催)の最終審査会が東京大学本郷キャンパスで開催された。2人はプレゼンで、「PHC」を活用した事業プランも発表。「PHC」開発者による空き家の訪問診断、「PHC」のレンタル業、そして、「PHC」で多くの空き家を診断して蓄積されたデータを利用し、家屋診断士の育成・雇用を増やしていく。これら3つを自分たちの空き家事業の柱に据える構想を描いた。

住宅に使われる木材の状態を診断する音波診断装置「PHC」(写真中央)を開発

2人のビジネス案は高く評価され、審査員特別賞を受賞した。「『PHC』の開発などの技術面にたけている北守君。僕は『PHC』を使ったビジネスの方向性を考えるのが好きで、2人の得意分野をうまく融合していけたのが良かった」(森山君)。北守君は、「大学進学後、建築に関する専門的な知識を学んでいこうと思っています。その中で、(空き家問題を解決する)このビジネスをより深めていきたい」と、意欲を語った。