中島杏菜さん(佐賀・唐津東高校2年)の美術作品「高校一年生」を紹介します。たくさんのトマトに囲まれて横たわり、視線をこちらに向ける女子高校生を描いたこの作品は、2021年の全国高校総合文化祭(紀の国わかやま総文2021)美術・工芸部門に出展されました。どのように制作したのか聞きました。

高校一年生(第45回全国高等学校総合文化祭 紀の国わかやま総文2021 美術・工芸部門出展)

自分の未熟さトマトに込めて

―作品のテーマを教えてください。

「高校一年生」です。テーマを決める際、「高校一年生の時期にしか味わえないものを高校一年生が思うままに描いたら、面白くて説得力のある絵になるのではないか」と思いました。

当時の自分の未熟さや将来への不安、新しい環境での好奇心など、表しにくいものをどうやって訴えるか考えたときに、トマトのフォルムのかわいらしさや中に秘めている毒々しさがぴったりだと思い、今回のような作品になりました。

たくさんのトマトや倒れた少女に暗喩された「高校一年生の青さ」を感じていただきたいです。

次回作を制作中の中島さん

―こだわったり、工夫したりしたポイントは?

奥に行くに従って熟していくトマトで、画面に時間の経過を表現しました。光源は画面奥にすることで、未来に待っている明るさが感じられるようにしました。少女の目線を見ている人に向けることで、明るい画面の中に何かドキッとさせる不穏さを感じさせるよう工夫しました。

トマトのつるっとした質感に苦戦

―何が難しかったですか?

トマトの量が尋常ではないので、それら一つ一つをリアルに描くことはとても時間がかかりました。人物や背景とは違う、トマトのツルっとした質感は、表現が難しく、薄く溶いた絵の具を何回も塗り重ねながら表現しました。

光源が画面奥にあり、手前が逆光となるので、明度を低くしつつ雰囲気を暗くしないようにすることにも苦労しました。

制作者の中島杏菜さん

―制作中のエピソードを教えてください。

うまい先輩方に囲まれながら描いたので、プレッシャーが大きかったのですが、先生や先輩方に意見を聞いたりしながらうまく一枚の絵にまとめることができました。客観的な意見も聞きたいので、毎日の進捗(しんちょく)を写真に撮っては家族に見せ、素直に思ったことを聞き出したりもしていました。

また、その時期にちょうど花火大会が行われており、先輩方と見る花火は制作の疲れが癒やされてとても楽しかったのを覚えています。

―よい作品を作るためのコツを教えてください。

普段から自分の好きなものを意識することが大切だと思います。作品や、商品のパッケージ、風景など、何となく「いいな」と思ったものは描き留めたり写真に収めたりすると、自分の「好き」が見えてきて作品作りにも生かすことができます。