新型コロナウイルスの流行は、私たちの人間関係に大きな影響を及ぼしています。「友だちのつくり方がわからない」など、悩みを抱える人も多くいます。千葉商科大学では、コロナ禍における「つながり」のあり方を考えるトークイベントを開催。イベントには、文筆家の清田隆之さん、フリーライターの姫野桂さん、同大学准教授の常見陽平さん、同大学生の大森千聖さんが登壇。人間関係についての悩みの解決策を提言しました。(文・高槻官汰 写真・千葉商科大学提供)

オンラインゲームで絆深め

―一般公募で大学生から悩みを募りました。まずは「もっと学生らしいことをしたいですが、人と出会う機会が減っています。出会う機会を増やすために何をすれば良いのですか?」。アドバイスをお願いします。

清田 出会いの場が限られているのは、切実な問題です。

学校以外では、自ら進んで接点を設定する必要があります。友達の友達を紹介してもらって、縁をたぐり寄せるなどさまざまな工夫を。発想を豊かにして「接点」をどう設定していくのか、自分なりに考えてみる。実力と才覚次第で、交友関係は広げていけると思います。

清田隆之さん

姫野 私の友人はコロナ禍以前に結婚しましたが、オンラインゲームが出会いの場だったそうです。皆で力を合わせて戦っていく中で、絆が芽生えていくようです。

イマドキ大学生はアプリで友達作り

常見 最近の大学生は、どのように出会いの場を作っているのでしょうか?

大森 マッチングアプリを使って友達をつくる人もいると聞きます。

清田 他者との共通項を探す上で、マッチングアプリは良いツールです。その反面、ほぼ接点が無かった人と1対1で会えてしまうため、怖さもあります。

相手の言葉・振る舞い・行動を判断するためには、それなりの情報収集が必要。相手と同じ空間にいるなら、目線の配り方など、言語化できない情報も加味して判断できます。しかし、オンライン上での交流だけでは、十分な判断ができず、不安になることもあるでしょう。

姫野 実際にマッチングアプリを試しましたが、すぐにLINEを交換しようとする人もいたりして……。私には合わないと感じました。

姫野桂さん

常見 最終的に大切なのは「この人と一緒なら、笑ったり泣いたりできる!」と心の底から思うことができるかどうかであると感じました。

見返りを求めない愛で成長できる

―続いての質問です。「恋愛から学べること、得られる経験について聞きたいです。誰かと交際するという経験が無く、必要性も感じられません。恋愛は自分を成長させてくれるのでしょうか?」。

大森 この人は「一生のうちに必ず恋愛をしなくてはならない」と固定観念を持っているのかな。見返りを求めない愛情を他者に注ぐ経験ができるという意味で、恋愛は自分を成長させてくれます。

大森千聖さん

姫野 恋愛を通して、人を思いやることが学べます。例えば、相手への誕生日プレゼントを選ぶとします。「彼はこの前、あのブランドの服を気に入っていたな」などと思いをはせれば「プレゼントを選んでいる時間=相手を思いやる時間」になると思います。

人を傷つける、誤解する経験は人生の糧になる

清田 この人は、友達やメディアに影響されて「恋愛は貴重な経験で、自分を成長させてくれる」と考えているのではないでしょうか。故に「恋愛に興味が無い状態を続けて良いのか」などと不安を抱いているのだと思います。そう考えていくと、モヤモヤの核心に迫ることができるのかなと感じました。

常見 「人を傷つけてしまった」「誤解されてしまった」などの経験は、年をとってから自分自身の財産になります。相手に喜んでもらえるよう振る舞う術を学ぶ上で、恋愛は自分を大きく成長させてくれます。

だからと言って「成長するために恋愛をしなければならない」という考え方は少し違う気がします。成長だけを目的とするのなら、恋愛小説を読んで疑似体験するなど、他にも術があると感じますね。

常見陽平さん

行動することを止めないで

清田 若者が求めているコミュニケーションの質と、置かれている境遇で得られる交流の形がマッチしていないのだと感じました。

常見 若者に伝えたいのは「皆が見ているから大丈夫だよ」ということです。良いことも悪いことも、頑張っていることも苦しんでいることも皆が見ています。あなたが行動を起こせば自然と仲間は集まってきます。

ちゅうちょして、行動することを止めないでください。コロナ禍において、どのように自分を飛躍させるか、常に考えておくと良いのではないかと思います。