「ナルコレプシー」という病気を知っていますか? 「過眠症」と書くと、漢字からその症状を想像できるかもしれません。この記事で、突然強い眠気に襲われるナルコレプシーについて知ってもらい、特に心当たりのある人は病院での治療につなげてもらえればと思います。(もみじ大福=3年)

日中に強い眠気、悪夢や金縛りも

「ナルコレプシー」(過眠症)とは、体内の「オレキシン」というホルモンが何らかの原因で減少することにより、日中に突然強い眠気に襲われる病気です。

ほかに、感情が高ぶったときに体に力が入らなくなる「カタプレキシー」(情動脱力発作)という症状や、眠り始めに現実と区別がつかない悪夢を見たり、金縛りにあったりする、などがあります。

通院時に使っている診察券・保険証入れ

日本では約600人に1人がこの病気を患っているとされます。この数字は世界一だそうです。現在の医療技術では、この病気を完全に治すことはできません。

自転車で居眠り運転、田んぼに突っ込み…

私が発症したのはおそらく小学6年生のころだと思います。急に、学校の授業中に居眠りをすることが増えましたが、当時は病気だという認識は全くありませんでした。

中学生になると症状がひどくなり、授業中だけでなく、定期試験の最中や食事中、通学時の電車の中、学校の合唱部の練習中などでも眠るようになりました。

その後、中学3年のときに自転車を居眠り運転して、田んぼに突っ込む事故を起こしたことで病院に行き、そこで診断がつきました。

現在は薬を毎日服用して症状を抑えています。しかし、夜には眠る必要があるため、薬の効果が切れます。そのため、夜に勉強しているときに寝落ちすることがあります。これを防ぐために、あらかじめ薬の効果が切れる時間を逆算します。

大学入試の過去問演習などの負担が大きいものや、寝落ちしたらまずいものは、薬が切れる前に早めに終わらせるよう心がけています。この点、映像授業は、寝落ちしてもその部分を聞き直せるため便利です。

今服用している薬は睡眠不足だと効果が落ちるため、夜は遅くとも12時までには寝るよう心がけています。

普段勉強している机

一部の信頼できる人に打ち明け

病気のことは、担任や授業担当、養護教諭の先生などの学校の一部の先生方と、信頼できるごく一部の友人には伝えています。

先生方に伝えたときは、一部の先生方を除き、割とすんなりと受け入れられました。現在は授業中に居眠りをしたときに起こしてもらうようお願いしています。また、体育の先生には「カタプレキシー発作」が授業中に起こる可能性についても伝えています。今のところは発作が薬で抑えられているため、何か特別なことが必要になったことはありません。

友人には、病名を伝えたときには不思議な顔をされましたが、症状を伝えると納得してくれました。おそらく、中学生のころからいろいろな場面で居眠りをしているのを見られていたからだと思います。友人には授業中や電車の中で起こしてもらうよう頼んでいます。

私の病気のことを拡散されると、面倒なことになるのが目に見えているので、友達には不必要に他人に言わないようお願いしています。

薬の服用で病気と付き合っていける

この病気は10代で発症することが多いといわれています。皆さんの中に、先に挙げた症状に心当たりがある人がいたら、病院へ行って検査を受けましょう。また、もし皆さんの身の回りにそのような人がいたら、病院へ行くよう勧めてください。

「NPO法人日本ナルコレプシー協会(なるこ会)」「日本睡眠学会」のホームページには、ナルコレプシーについての詳しい解説や専門の病院の一覧が載っています。信頼できる学校の先生に病気のことを伝えることも大切です。養護の先生などが良いのではないかと思います。

この病気は、薬をきちんと服用することで、上手に付き合っていくことができます。また、きちんと診断を受けることで、大学受験の際にも合理的配慮を受けられる可能性があります。

自分の体と病気について知るのが大切

この病気との付き合い方は、自分の体と病気についてよく知り、上手にコントロールできるようになることではないかと思います。

具体例を挙げるならば、薬の効果が切れる時間帯から逆算して計画を立てることなどがあげられます。また、危険な場面で症状を起こさないよう医師と相談し、乗り物の運転中の居眠りや、水泳の授業中のカタプレキシーなど、命にかかわる場面での発作が起きないよう薬を調節したり、疲れているときは危険な行為をできるだけ避け、例えば自転車ではなくバスを使うなどの工夫をすることも重要だと思います。

現在このような症状で苦しんでいる人は、希望を持ってください。そして、この病気について多くの人に知ってもらい、適切な治療を受けられる人が少しでも増えることを願っています。