12 月23 日から始まる全国高校バスケットボール選抜優勝大会(ウインターカップ)に出場する金沢総合(神奈川)女子バスケットボール部。狭い練習スペース、短い練習時間という問題を解消するために、トコトン無駄を省いている。(文・写真 青木美帆)

■待ち時間にも腕立て
16時ジャスト。「時間!」。主将の吉成文(3年)=神奈川・平戸中出身=の声が響く。部員たちが集まり、輪になって手をつなぐ。「1、2、3、ファイト!」。掛け声が終わって、最初の練習メニューが始まるまでの時間は5秒やそこら。あまりの素早さに、しょっぱなから面食らった。

 

体育館をほかの部活と共用するため、週6日の練習のうち、半面しかコートを使えない日が3日ある。取材日も14㍍×15㍍の狭いスペースをフル活用していた。

タップやミートシュートの練習中、先に終わった選手が余ったスペースでダッシュ、ドリブル1対1に励む。通常シュートやボールカットで終了するような練習でも、実戦を想定して次の攻守の動き出しまできちんと取り組む。

 

練習中に生じる順番待ちの時間も有効活用。ドリブルをしたり、腕立て伏せをしたり……。「狭いスペースで人数も多いので、順番を待っている間にできることを各自考えてやっています」(吉成)

■2時間半 ほぼ休みなし
練習メニューはすべて「5分」「2分×3セット」というように明確に時間で区切られている。清水麻衣監督は「短い練習時間を効率よく使うことが目的です」と説明する。時間がない中、練習メニューをこなせる回数は限りがある。たくさん練習したいと思うなら素早く行動しなければならない。「順番にやるようなメニューは、先頭争いが熾烈ですよ」と五十嵐律美(3年)=同・中央大学横浜山手中出身=は笑う。

 

セットしたタイマーのブザーが鳴った瞬間に次のメニューが開始――。この素早い切り替えが2時間半、ずっと続いた。まとまった休憩時間は一度もなく、順番を待つわずかな間に水分補給する。しかし、選手たちの目の色は、初めから最後まで変わることはなかった。 「バスケットに必要な体力は、バスケットの練習をしっかりやればつく」(清水監督) 限られた時間とスペースを、余すことなくバスケットに使う――。部が公立校ながら強豪校で居続ける理由はここにあった。

 
 
【TEAM DATA】
1976 年創部。部員27 人(1年生6人、2年生10 人、3年生11 人)。全国大会出場50 回(前身の富岡時代含む)。2011 年にインターハイ優勝。OG に中畑恵里(富士通レッドウェーブ)、宮沢夕貴(JX-ENEOS サンフラワーズ)ら。

ヒントを与えて考えさせる  清水麻衣監督(26)

 

1年を通じて完全下校は19 時。土日は1日2回(9時からと15 時から)練習しますが、1回の練習は、平日も土日もきっちり2時間半です。その短い練習時間を無駄にしないよう、止まらず休まず、切り替えを早く練習しています。練習を見学された方はまず、そこに驚かれますね。

その中で特に選手たちに求めているのは、考えながら練習すること。これは私が現役のころから変わらない伝統です。

例えば、アップは全員で一緒にしません。早く体育館に来て早く終わらせて練習を始めることもできます。人によって必要な量が異なりますから。自分で考えて自分に合ったアップをするよう伝えています。

また、練習中の待ち時間などに、チームメートのプレーを見て考えたり、学んだりしなさいとよく言います。一度教えたら何回も言わない。「どうしたらできるかは、この前言ったでしょ?」とヒントを与えるにとどめます。

選手たちにはバスケットを通じて、「考える」「気遣う」といった、今後の人生につながることを身に付けてほしいと思います。日常生活から、高校生の常識ではなく、社会の常識で考え行動する。こういった心掛けがバスケットにも返ってくると教えています。

【しみず・まい】
1987年、神奈川県生まれ。同校OG。金沢総合の3年時(2004 年)にウインターカップ優勝。東京学芸大を卒業後、10 年に母校に着任。アシスタントコーチを経て12 年から監督。