地方の高校生の大学進学を応援する東京大学の学生団体「FairWind」に所属する佐藤沙織さん(文科一類1年、前橋女子高校出身)から高校生への、「高校時代の不安とその解消法」のアドバイスを紹介します。

私ほどの心配性はなかなかいない

私は大がつくほどの心配性です。何から何まで心配し、リスクを冒すことは大嫌いです。

この記事も「間に合わなかったら大変だ」と思って、期限のはるか前に執筆しています。

高校時代は先生に「生きる上で苦労が多そうですね」と言われました。

確かに、考えてみれば「不安」は私の人生にずっとつきまとってきたものです。

何か新しいことに挑戦したいと思っても、あらゆるリスクを想定し、「やっぱりやめておこう……」と思ったり、勇気を出して始めたことも「最後までやりきれなかったら……?」と急に不安になったりします。

しかも私ほどの心配性にはなかなか出会わないので、なかなか理解は得られません。

「本当に受かるのか」落ちることばかり考えていた

私が東大を志望したのは1年の時ですが、その時も、2年の時も、「東大」というワードが漠然としすぎていて不安はあまり感じていませんでした。

ただ目の前のテストでいい点を取り、復習を重ねる、それだけに集中していました。

しかし3年になって本格的に受験生になると、例の私の「心配性」が発動しました。

「本当に受かるのだろうか」「落ちたらどうなるのだろう、浪人したらやる気は続くのだろうか」

「なんでこんな人生がかかっている場面で、私らしくもない大きな挑戦をしてしまったのだろう」

……不安はつきませんでした。私は心配しすぎて合格後のビジョンなど全くなく、落ちた後どうするかばかり考えて勉強していました。

ここまでの心配や不安を抱える人は少数派かもしれませんが、

受験期に精神的に不安定になることは集中力を弱める元になり、あまり良くありません。

ここからは不安と長らく向き合ってきた私ができるアドバイスをさせていただきたいと思います。

ペット相手でも相談したほうがよい

①不安な時は誰かに相談する

これは良くあるアドバイスですが、悩み事を一人で抱え込むのは良くありません。

親でも友達でも誰でもいいです。なんならペットやぬいぐるみでも構いません。ノートに書くのでもいいです。

なぜなら、相談の本質的な意義は、「不安を言語化する」ことにあるからです。

不安は黒い雲のように頭の中に覆い被さってきて、正常で論理的な思考を妨げます。

具体的に何を不安に思っているのかを明確にすることで、もやもやしたものがかたまり、解決法を考えられるようになります。

そもそも言ってしまえば、受験期の高校生の抱える不安の多くは「このままの勉強法でいいのだろうか」「志望校に受かるだろうか」など

他人に相談しても100%解消されるようなものではないのです。

もちろん人間に聞いてもらうことができれば、理解を得られたり、その人の解消法を参考にしたりすることもできるので最善ですが、

そうもいかない時でも「誰にも言えない…」と考え込まずに誰かに(何かに)話してみましょう。

たくさん心配したおかげで本番を乗り切れた

②心配事が現実になることはそんなにない、不安に思えて良かったと思おう

具体的な不安として、「滑り止め全落ちのまま本番を迎えたらどうしよう」とか「本番緊張して体調を崩したらどうしよう」など、対策しても防ぎきれないかもしれないものがあります。

具体的なだけに実際に起こってしまうかもしれないと思って怖いですよね。

しかし、経験則から言って心配事の大半は実際には起こりません。そして、逆に今不安に思えたことに良かったと思いましょう。

今から対策を考えられる問題ではなかったとしても、未来の可能性の一つとして予測できたのです。

例を挙げて説明すれば、

「滑り止めの大学だから、まあどれかは引っかかるだろう!」とばかり思っていた人と、

「滑り止めとはいえ全部落ちてしまうかも……」と思っていた人では、

本当に全落ちしたときの精神的ショックはどちらが大きいでしょうか。

今までの勉強への向き合い方も、第一志望校の受験の時の精神状態も違うと思います。

私は高校時代に先生にたくさん話を聞いていただきました。

それによりなんとか精神状態を保てていたのだと思います。

そして人の何倍もの心配と不安を積み重ねたおかげで、

本番の試験開始直後にトイレに行きたくなっても、解こうと思って開いた一問目がちんぷんかんぷんでも、

もっと重大なことが起こる心配をしていたおかげであまり動揺しませんでした。

(例えば、試験時間に遅刻するとか、忘れ物をするとか、スマホの電源を切り忘れてつまみ出されるとか。)

不安は完全な悪者ではありません。

上手に付き合って、乗り切りましょう。

【FairWind】東京大学の学生がつくる団体。地方と都会の教育格差の解消をめざして、東大生と地方の高校生との交流などの活動をしている。