世界の高校生が化学の実力を競い合う「第53回国際化学オリンピック」が7月25日から8月2日までオンラインで開催された。大会後に開かれた記者発表会で、日本代表の選手に、大会の感想や将来の目標を聞いた。(高槻官汰)
5時間に及ぶ難問に挑んだ
今大会には、過去最多となる85カ国・地域から312人の選手が参加した。
日本からは4人の選手が参加し、小池佑弥君(名古屋市立向陽高校 3年)、竹本隆弘君(洛南高校 3年)、西浦洸平君(京都府立園部高校 3年)が銀メダルを、一瀬陽日君(東京都立小石川中等教育学校 5年)が銅メダルを獲得した。
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オンライン開催のため、例年実施されていた実験試験は取りやめられた。選手らは5時間の理論試験に臨み、日本の自然や日本人科学者の発見を踏まえた問題など、数々の難問に挑んだ。
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知識を駆使して解くのが楽しい
理論試験について、竹本君は「代表の4人で集まって試験を受けたことが一番印象に残っている。どの過去問よりも、1問1問を解く満足感や楽しさがあった」と振り返った。
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西浦君は「試験問題は難しかったが、いろいろなテーマが横断的に扱われていて、自分が今までに得た知識を駆使したり、基礎的な知識を組み合わせたりして解いていくのがとても楽しかった」と笑顔を見せた。
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アバターで国際交流
参加者たちは、オンライン上の分身である「アバター」を利用して国際交流を深めた。アクティビティには、最先端の研究施設の見学、日本文化の紹介といった活動が取り入れられた。
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小池君は「時差の影響で一部の選手としか交流ができなかったのが残念だったが、今まで勉強してきた英語でコミュニケーションをとれ、うれしかった」と感想を述べた。
コロナ禍の中、行われた今大会は、日本代表選手にとって貴重な学びの機会となった。
一瀬君は「大会に参加して、さまざまな分野を学ぶと、より専門的な内容も理解できるようになることを発見した。学びを重ねることで、利用できる知識の範囲が広がり、自身の研究に応用できるようになる」と説明した。
科学を学べば「コロナ禍で間違った情報に惑わされない」
最後に、選手らが思う化学の魅力と、将来の目標を聞いた。
一瀬君「科学リテラシーが身につくことが、化学を学ぶ魅力である。科学リテラシーは、コロナ禍の中、間違った情報に惑わされないために大切な力である。将来は化学分野の研究をするとともに、化学をより深く理解するために数学や情報分野も学んでいきたい」
竹本君「化学を学ぶことで、身の回りにある物がどのように作られているか、身の回りでどのような現象が起きているかを理解できる。この点に化学の魅力を感じる。将来は興味を持っている物理化学のみならず、英語や日本文化などを広く知りたい」
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西浦君「化学の魅力は、何かを体系的に学ぶ快感を、実感を伴って得られることにある。この大会を通して、自分の化学に対する興味が有機化学以外の分野にも向いていることが分かった。大会でさまざまな分野に触れたので、将来は、その経験を生かして分野をまたがるようなことを研究し、たくさんの人に伝えていきたい」
小池君「化学の魅力は、これまでにできなかったことができるようになることである。大学に入学してからは、より一層化学を真剣に学びたい。将来は化学に関係する仕事で世の中の役に立ちたい」
なお、来年度の国際化学オリンピックは、中国で開催される予定だ。