𠮷岡佳祐君(兵庫・小野高校3年)の美術作品「The 腕自慢」を紹介します。鍛え上げられた筋肉の躍動を力強く描き、文化部の全国大会の一つである全国高校総合文化祭2020こうち総文の美術・工芸部門に出展しました。どのようにして制作したのか聞きました。

「The 腕自慢」(第44回全国高等学校総合文化祭 2020こうち総文 美術・工芸部門出展)

筋肉の躍動を表現

―何をテーマに描いたのですか?

テーマは筋肉の躍動です。

偶然見た、ホワイトハウスで働くものすごい筋肉の料理人の写真に触発され、筋肉を描いてみたいと思うようになりました。鍛え上げられた筋肉が激しくぶつかり合う躍動感を、大きなキャンバスに力強く表現したので、見ていただいた方にパワーを感じていただけると幸いです。

―ものすごく迫力があります!

あるものに人生を捧げる人がいる。それが見慣れた何気ない日常の中に存在していると、他との明らかな傑出度の違いから「違和感のようなもの」が生まれます。

そのいつもの風景との乖離が面白く魅力的に感じたので、何とか作品として表現したいと思いました。

―違和感、がポイントですね。

そこで、いつものように腕相撲をする私たちを、あたかも究極の筋肉を身に付けたかのように描きました。

いつもとはかけ離れた腕相撲の風景にすることで、異常なほどの筋肉の躍動と、熱く魅力的な違和感を表現することができました。見ているだけでつい、力こぶを握ってしまう……そんな絵にしたかったのです。

力強さ求め赤い色彩に

―こだわったり工夫したりしたポイントは?

約3カ月かけて制作しましたが、特に色にはこだわりました。

人間の体の色はさまざまです。また、さまざまな色に変化します。白いと弱々しく感じますし、力が入れば高揚して赤くなります。

この絵も最初はもっと肌色に近かったのですが、もっと力強く、もっともっとと赤くしていくうちに、表情も鬼のような形相となり、画面全体が赤くなってしまいました。

結果として、表現したいことがより強調されてよかったと思います。

―難しかった点、苦労した点は?

筋肉の力強さを表現するにあたり、どんな構図にするか非常に悩みました。

腕相撲の場面を描くと決まってからも、うまく状況を説明しつつ迫力ある角度がなかなか見つかりませんでした。

最終的には顧問の先生や部員に協力してもらい、腕相撲をしてもらって、さまざまな角度からカメラで撮影してこの構図に決定しました。

美術部の友人に意見求め

―制作途中で印象に残っているエピソードを教えてください。

私は、制作途中の絵を他人に見てもらうことに全く抵抗がないので、多くの人に積極的に見てもらいました。

そして自分のイメージが、絵を見た人にどのように伝わっているか確認するため、周囲で一緒に描いている美術部の友人に、客観的にどう思い、どう感じるかをよく聞きました。そのときの意見は非常に面白く、会話するたびイメージが膨らみました。

絵の中の人肌を少しずつ赤くし始めたころは、かなり大笑いされましたが、赤くなるほど見た人の意見や反応が増え、パワーが伝わっていると感じました。

―よい作品を作るためのコツは何でしょうか?

作品を制作するときは、自分が描こうとしているものを、しっかり研究することが大切だと思います。

色や形だけでなく、ざらざらしている、つるつるしているといった質感や、内部の構造まで理解できていれば、何を描いているのかはっきりと伝わりますし、空気感を感じるようになり、自然と上達していくと思います。