日野(滋賀)の園田平(3年)=滋賀・日野中出身=は今年の高校レスリング界の主役の一人。五輪種目からレスリングが外れるかどうかの渦中、心が揺れながらも全国高校総体(インターハイ)96㌔を制すなど高校3冠を達成。実施が決まった2020年東京五輪での金メダル獲得を目指す。(文・写真 白井邦彦)

レスリング一家で育ち、小学生時代から全国に名をとどろかせてきたが、高校ではなかなか結果を残せずにいた。6度の世界選手権出場を誇る南敏文監督(56)が「抜群のセンス」と評す逸材ながら、インターハイ制覇は今年が初めてだった。

転機は昨年10月の岐阜国体にさかのぼる。2回戦で、優勝した吉川裕介(茨城・霞ヶ浦)と対戦した園田は、3ピリオド制の第2ピリオド途中まで5点リードで相手を圧倒していた。だが「あまりにも調子が良くて攻め過ぎた」ことで、足をすくわれ逆転負け。悔しくて号泣した。監督から「レスリングは見せ物じゃない」と厳しい一言を投げ掛けられた。「無駄に攻めなければ勝てていた。あれ以来、気持ちにブレーキをかけることを意識するようになった」

今年2月、レスリングが五輪競技の除外候補になった。その時に役立ったのが気持ちの制御だった。「除外の話を聞いた時は、自分の夢がなくなったと思ってショックだった。不安はあったけれど、必ず残ると信じてやるしかなかった」。不安定な精神状態の中で、3月の全国高校選抜大会、8月の全国高校グレコローマン選手権、インターハイの高校3冠を達成した。

東京五輪でのレスリング実施を聞いたのは、各階級の選抜大会優勝者が集う韓国遠征中。「とにかくうれしくて。みんなと叫んで喜んだ」 この瞬間、五輪で優勝という小さいころからの夢は「東京五輪で金メダル」という具体的な目標へと変わった。

そのだ・たいら 1995 年11 月27日、滋賀県生まれ。保育園年長から日野の南敏文監督が主宰する「日野クラブ」でレスリングを始める。父親も南監督の教え子で、2人の兄も同校レスリング部出身。183 ㌢、98㌔。