鎌田美希さん

受賞理由 
 先天性の身体障害(両肢欠損)というハンディを抱えている中、幼小より水泳に取り組み、ジャパンパラリンピックをはじめ、アジア大会や世界大会にも出場し、高校在学期間中にも数多くのメダルを獲得した。2014年にはアジアパラリンピック委員会から、アジアで最優秀のユース選手に贈られる「2014ベストユースアスリート賞」を受賞。

初心に戻りスランプ克服

2013年のアジアユースパラ競技大会(水泳)で金メダル3つ、銀メダル1つを獲得した。14年にはシニア選手も参加するアジアパラリンピックに出場し、一気に日本を代表する選手へと駆け上がった。だが、高校2年の後半からはスランプに陥った。「アジアパラリンピックでは、自分がマークした400メートル自由形のアジア記録の更新を狙っていました。でも、結果は3位で記録更新もできず、ここから伸び悩みました」

昨年3月の世界水泳選手権代表選考会でも力を出せずに日本代表から外れた。「このままではダメ」と落胆していた時、通っていた整骨院の先生が競泳経験者だったことを思い出し、指導を仰ぐと、「水泳を楽しんでみたら」と言われた。「フォームも見直しましたが、一番の変化は気持ちの面でした」。記録にこだわり過ぎていた鎌田さんは「その言葉で昔みたいに楽しめるようになりました」。

初心を取り戻した鎌田さんは、健常者と同じ舞台で競う3年次の奈良県高校総体800メートル自由形で8位に入り、近畿大会にも出場した。「高校3年間の目標の一つだったのでうれしかった」

3月のリオデジャネイロパラリンピック日本代表選考会に向けて猛練習中の鎌田さん。卒業後は関東の大学に進学し、20年の東京パラリンピックでのメダル獲得を目指す。

(白井邦彦)

鎌田さんへのQ&A 

Q.高校3年間をどのような心構えで過ごしましたか?

何でもやってみることを心掛けて過ごしました。もともと好奇心が強い方なので色々と挑戦はするのですが、どうしても迷う時もあります。そういう時にまずやってみることで新しい道が開けることもあったので、皆さんも何でも挑戦してほしいと思います。

Q.競泳以外で印象に残っているエピソードはありますか?

私は競技生活を終えた後、水泳の指導者か、小学校の先生になりたいと思っています。高校では小学校教諭を目指す教育コースで3年間学びました。その授業の一つに、地元の小学校で2年生の先生に数日間密着する見学授業があるのですが、そこで貴重な体験をしました。

私は、自分が両足義足だということを子どもたちには話していませんでした。でも、最終日に子どもたちが私の異変に気付きました。隠そうかと迷いましたが、ありのままの自分を隠さず、子どもたちに義足を見せました。みんな驚いていましたが、生まれつき両膝から下が無いことなどを説明することで身体障害について興味を持つ子もいました。義足をからかう子もいませんでした。

自分をさらけだせば、しっかり受け入れてくれる。この経験はこの先の人生で役立つと思います。

学校の特色 
 創立94年目を迎える文武両道の伝統校である。校訓は「自彊」「和敬」「創造」。平成18年には小学校などの教員を志す生徒のために、全国で初めて「教育コース」が設置された。鎌田美希も教育コースの生徒である。