高校生スイマーとして注目されている谷川亜華葉(大阪・四條畷学園高校3年/イトマンSS)。4月の日本選手権で厳しい代表争いを勝ち抜き、高校生で東京五輪の代表権を獲得した。昨年はコロナ禍で学校生活が激変し、インターハイも中止。戸惑い、一時はやる気を失っていたが、自分を奮い立たせつかんだ栄冠だった。(文・田坂友暁、写真・中村博之)

応援してくれた母に感謝

「お母さんには本当に感謝しています」

東京五輪の出場権を懸けて4月に行われた競泳の日本選手権。400m個人メドレーに出場した谷川亜華葉(大阪・四條畷学園高校3年/イトマンSS)。最後の追い上げで逆転して2位に入り、初の日本代表入りを果たした。

 高校生スイマー・谷川亜華葉。K-POPが好きで、日本選手権のときも韓国のアイドルグループ、セブンティーンのライブを見てレースに臨んだという(21年4月、日本選手権)

女手ひとつで谷川を育て、いちばん近くで応援し続けてくれた母。実は母も水泳選手で、指導を受けていたコーチまで同じ。そういう縁もあり、母への感謝の言葉が最初について出た。

「五輪が決まったときに報告したら、ただ感動した、と言ってくれました。好きなことをさせてもらっているので、好きなことの結果で恩返しをしたいなって思っていました。今回、それができたんじゃないかと思います」

悔しさ味わい「スイッチオン」

2019年に熊本県で行われたインターハイで、200mと400m個人メドレーに2冠を達成。そこで谷川は若手の「新星」として一気に注目を集めた。

勢いに乗りたかったが、2020年に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて東京五輪が延期。インターハイも中止になってしまう。

「なかなか立ち直れなかったというか、練習を頑張る、ということがすごく難しくなってしまいました」

2年生になり、学校の課題も増えていた。コロナ禍で授業もなくなり、各教科の先生から出された課題を写真に撮って提出するという方法になった。

慣れない授業法や生活に、なかなかONにならなかった谷川のやる気スイッチ。それがようやく入ったのは、夏が終わってからだった。

「8、9月くらいから試合に出始めたんですけど、思うような結果が出せなくて悔しかったんです。そこでちゃんと頑張りたい、とスイッチが入った感じです」

小柄だが体力に自信あり

身長は水泳選手にしては159センチと小柄。その体格を補ってあまりある持久力が谷川の武器だ。その武器は、幼少期からじっくりと積み重ねてきた豊富な練習量によって作られた。

持久力が谷川の武器の一つ(21年4月、日本選手権)

泳ぎのセンスの良さだけではなく、人の意見を聞き入れる素直さも谷川の特徴だった。そして、目標を定めたら一生懸命取り組み、自らやるべきことを探し、取り組める強さもある。

つらい練習も、苦しい練習も、泣きながらも頑張り続けてきた。それはただひとつ、五輪出場という大きな夢があったからだ。

東京五輪本番で羽ばたくために

今の谷川の目標は、東京五輪で決勝に残ること。そこから逆算して考え、自分に足りない課題を探り、見つけ、一つ一つつぶしていきたいと言う。

「課題が全部できれば不安もなく、自信を持って本番に臨めると思います。予選からしっかりとタイムを出して、ゴールして電光掲示板を見たときに笑って終われたらうれしいです」

そうはにかみながら話す姿は、いち高校生。K-POPが好きで、日本選手権のときも韓国のアイドルグループ、SEVENTEENのライブを見てレースに臨んだという。

亜華葉、という名前は、蝶のように羽ばたいてほしい、という願いを込めてつけられた。その羽を大きく開き、羽ばたく美しい姿を東京五輪という夢の舞台で見せてくれるに違いない。

たにがわ・あげは 2003年6月15日、大阪府生まれ。大阪市立大正東中学校卒。イトマンスイミングスクール所属。4歳のとき親の勧めで水泳を始める。2019年インターハイで200m、400m個人メドレー2冠、同年茨城国体の400m個人メドレー優勝。今年4月の日本選手権の400m個人メドレーで、4分37秒90の自己ベストを更新し初の五輪代表権を獲得した。

21年6月25日14時 高校名に誤りがあったため修正しました