週6日水泳の練習をし、学業成績も常にトップクラスをキープする井口詩音さん(東京・明星高校3年)。昨年7月に行われた関東大会を新型コロナウイルス感染により欠場したものの、前を向きひたむきに練習を重ねている。高校3年間ひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第25回「高校生新聞社賞」にも選ばれた井口さん。気持ちを切り替えられた理由や、勉強と水泳を両立させた方法について聞いた。(椎木里咲)

コロナ感染を乗り越え次の目標見据える

井口さんが水泳を始めたのは3歳のとき。1歳上の姉がスイミングスクールに通う姿を見て「自分もやりたい!」と通い始めた。小学校4年生のときに、専門を背泳ぎに決めた。

中学校に入ってからの練習は週6日。中学まではスクール1本、高校入学後はスクールに加えて学校の水泳部にも入部し、ひたむきに練習を重ねた。

背泳ぎの練習をする井口さん。中高6年間、週6日の練習を重ねた(本人提供)

努力のかいあり、高校3年時のインターハイにつながる東京都大会では予選で7位に入賞。インターハイ出場タイムを切り、関東大会への出場を決めた。しかし7月の関東大会1週間前、新型コロナウイルスに感染。大会は無念の欠場、そのまま水泳部を引退した。

「つらかったです。コロナにかかったことが分かったときは、一晩中泣いていました。『なんで今なんだろう』と、悔しい気持ちでいっぱいでした」

しかし水泳部を引退後も、週6日の練習を続けている。その理由は、3月に開催される年齢別の全国大会、ジュニアオリンピックに出場するためだ。

「ジュニアオリンピックがあったから、『次に向けて頑張ろう』とモチベーションを保てました」

スキマ時間の活用で勉強時間確保

「水泳漬け」の高校生活を送ってきた。学校の定期テスト期間、部活は休みになるが、スイミングスクールはいつもと変わらず週6日の練習がある。しかし、井口さんは学業成績を常に上位にキープ。3年間、水泳と勉強を両立させた。

井口さんが使っているプルブイとゴーグル。プルブイは足に挟み、腕だけで泳ぐ練習に使う

心掛けていたのは「スキマ時間を無駄にしないこと」と「授業をしっかりと聞くこと」。練習から帰ると遅い時間で長時間の勉強ができないため、朝5~6時に起きて1~2時間勉強した。学校から帰ってスイミングスクールに向かうまでの約1時間も勉強にあて、コツコツと勉強時間を積み重ねていった。

「他の子に比べて時間が足りないので、頑張って授業中に集中して覚えるようにしていました。寝る前はものを覚えやすかったので、単語などの暗記系は寝る前に勉強。勉強をしていて分からないことは、友達と話し合って解決します」

水泳のおかげで「諦めない心」が持てた

担任を務めるのは武山新也先生。「与えられた課題をしっかりと、コツコツとやる生徒。しっかりしていて、自分がやってきたことを『背中で示すタイプ』です」

井口詩音さん。春からは大学の文学部に進学する

春からは大学へ進学し、新しい道を歩む。水泳を続けるかはまだ決まっていない。

「水泳を通してメンタルが強くなって、諦めない心を持てました。ジュニアオリンピックはもしかしたら最後の大会になるかもしれないので、今までの水泳人生で一番いい泳ぎをしたいです」