「私学の雄」として、何かと比較されがちな早稲田大学と慶應義塾大学。実際のところ、どのような違いがあるのだろうか。20年以上にわたって大学生の「ナマの声」の取材を続け、『大学図鑑!』の監修を務めるオバタカズユキさんに、早慶のキャンパスの雰囲気の違いを聞いた。(安永美穂、協力・ダイヤモンド社)

全部が都会な雰囲気じゃない

―キャンパスの立地や雰囲気の違いは?

早慶ともに、学部によってキャンパスが異なる「学部割れ」大学だ。慶應は、SFC(湘南藤沢キャンパス)以外は学年によって通うキャンパスが変わる「学年割れ」でもある。

それぞれ早稲田キャンパスと三田キャンパスのイメージが強いが、郊外にあるキャンパスはかなり雰囲気が違うので、注意してほしい。

―早稲田のキャンパスの雰囲気は?

学部生が通う主なキャンパスは4つある。主要な文系学部がある「早稲田キャンパス(政治経済・法・商・教育・社会科学・国際教養)」と「戸山キャンパス(文・文化構想)」の周辺は、東京でも最大規模の学生街で活気にあふれている。

早稲田キャンパスは「本キャン」と呼ばれる。学部によってガラス張りだったり、ボロボロのままだったり…と差がある。戸山キャンパスは「文キャン」と呼ばれ、女子学生が多い。一人で過ごせるスペースも多く、いわゆる「ぼっち」でも居心地がよい。

そこから少し離れた「西早稲田キャンパス(基幹理工・創造理工・先進理工)」は、コンクリートむき出しの建物が並び、キャンパスライフを謳歌するというよりは「勉強・研究に専念する場」というイメージ。

「うちの田舎のほうが都会だった…」

―所沢にもキャンパスがありますね。

「都の西北、そのまた西北」などといわれる「所沢キャンパス(人間科学・スポーツ科学)」は、埼玉の小手指駅から畑や野原を眺めつつバスで15分。地方出身の学生が「うちの田舎の方がずっと都会だった」と言うような環境なので、早稲田キャンパス周辺のにぎやかな学生街をイメージして入学した学生はショックを隠せない。

所沢や西早稲田キャンパスの学生が華やかな大学生活に憧れて、本キャン(早稲田キャンパス)のサークルに入るケースもある。

立地と通う学生で雰囲気がガラッと変わる

―慶應のキャンパスの雰囲気は?

主なキャンパスは6つあり、「日吉(法・経済・商・理工の1~2年次、医・文・薬の1年次)」は、一言で言うと「チャラチャラ」。雑木林もあって、都会に近いが緑が豊かだ。

「三田(法・経済・商の3~4年次、文の2~4年次)」は「セカセカ」。慶應の顔であり、オフィス街に食い込むかたちで立地している。「矢上(理工の3~4年次)」は「モクモク」。研究室や実験室で研究に没頭する学生がひっそりと過ごしている。

「信濃町(医の2~6年次、看護医療の3年次)」は「キチキチ」。食堂もなく、大学病院の附属としてのキャンパスと表現したほうが適当かも。

「芝共立(薬の1年次の週1回ほどと2~6年次)」は「ホンワカ」。「湘南藤沢〈SFC〉(総合政策・環境情報の全学年、看護医療の1~2&4年次)」は「サイバー」といった感じ。他キャンパスと比べ極端に別世界という印象。自然の中にあり、広い公園に校舎が立っているようなイメージだ。

異色なSFC、学生も独特

―キャンパスごとに、かなり雰囲気が違うようですね。

1~2年生が集まる日吉キャンパスは、三田に比べると「幼い」学生たちがにぎやかにキャンパスライフを楽しんでいる印象。3~4年生がメインの三田キャンパスに移ると、就職を意識し始める学生が増え、権威を感じさせる建物の雰囲気と相まって、やや改まったよそよそしい雰囲気に。

SFCは別の大学だと思った方がよく、市街地から遠く離れた自然の中に建物が並ぶキャンパス風景も学生気質もかなり独特。従来の学問領域の枠にとらわれない研究が行われているため、自分の好きなことを究めて成果を上げる学生もいるが、専門分野を見つけられずに苦しむ学生もいるという点では、多様性に富んだ早稲田に近い雰囲気もある。

 

 

オバタカズユキさん
フリーライター、フリー編集者。教育・キャリア分野の執筆が多く、1999年から『大学図鑑!』(ダイヤモンド社)を毎年刊行している。著書に『早稲田と慶應の研究』(小学館新書)、『大手を蹴った若者が集まる知る人ぞ知る会社』(朝日新聞出版)など。

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