「私学の雄」として、何かと比較されがちな早稲田大学と慶應義塾大学。実際のところ、どのような違いがあるのだろうか。20年以上にわたって大学生の「ナマの声」の取材を続け、『大学図鑑!』の監修を務めるオバタカズユキさんに、早慶の学生のキャラの違いを聞いた。(安永美穂、協力・ダイヤモンド社)

どんな人でも受け入れる「懐が深い」早稲田

―早慶の校風や学生気質の違いは?

もちろん個人差はあるが、どんな人でも受け入れる懐の深さがあって、「わが道をゆく」生き方を追求していくのが早稲田。組織に属することを重視しながら、人脈を駆使して合理的に行動するのが慶應。

早稲田には、あえてバカな振る舞いをして自虐的に笑いを取りに行く美学がある。学内ミニコミ誌で自分の大学のことを批判的に茶化すこともあるが、大学側の目が気になる慶應ではそんなことはあり得ない。

群れることが好きではない

―早稲田ならではの特徴は?

「バンカラ」とされてきた校風は過去の話。今は硬派なイメージはない。

ただ、「変わった人」や「個性的な人」を排除せずに多様性を楽しむマインドは今なお健在。そのような大学に通う自分を誇りに思っている学生が多い。集団で群れることはあまり好まないため、「協調性に欠ける」と見られがちな一面も。

サークルは公認団体で約550、非公認団体で約3000といわれ、日本一の規模を誇る。「いろいろな人の影響を受けながら、自分が面白いと思うことを見つけてやり遂げたい」という主体性のある学生には最高の環境だが、やりたいことがわからないと自分の居場所を見つけられずに孤立してしまう可能性も否定できない。

世渡り上手で合理的な慶應

―慶應ならではの特徴は?

「塾生(学生)」の横のつながり、「塾員(卒業生)」の縦のつながりがとにかく強い。

情報感度も高く、「お互いに勝ち組になろう」という意識のもと、こうしたつながりを生かして情報を共有し、成果を上げていく。全般的に世渡り上手で、単位取得や就職に関しても「どうしたらコスパよく結果が出せるか」を考え、合理的な行動をとることが多い。ただ、こうした行動はあくまでもさりげなく行い、ギラギラした欲望は見せないようにするスマートさが慶應生らしさ。

協調性を重んじるため、人間関係では同調圧力も働き、SFC(湘南藤沢キャンパス)以外では「変わり者にはかかわらない」のが一般的である。

 

 

オバタカズユキさん
フリーライター、フリー編集者。教育・キャリア分野の執筆が多く、1999年から『大学図鑑!』(ダイヤモンド社)を毎年刊行している。著書に『早稲田と慶應の研究』(小学館新書)、『大手を蹴った若者が集まる知る人ぞ知る会社』(朝日新聞出版)など。

『大学図鑑!2021 有名大学83校のすべてがわかる!』(オバタカズユキ 監修/ダイヤモンド社)
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