大学の「リアルな姿」は、パンフレットやホームページだけではなかなか見えてこないもの。20年以上にわたって大学生の「ナマの声」の取材を続け、『大学図鑑!』の監修を務めるオバタカズユキさんに、MARCHと呼ばれる明治、青山学院、立教、中央、法政の5大学のキャンパスの特徴を聞いた。(安永美穂、協力・ダイヤモンド社)

キャンパスの立地で生活スタイルが変わる

―大学選びはキャンパスの立地も要チェックですよね。都会と郊外で、どんなメリット・デメリットがありますか?

一般的に、都会のキャンパスはアルバイトや就職活動がしやすく、学外の人との接点も持ちやすい。だが、キャンパスが窮屈で気ぜわしくなりがちで、家賃や生活費が高いというデメリットも。

郊外のキャンパスは広々とした場所で勉強に集中できる反面、通学に時間がかかったり、学外の人との交流が少なくなったりする可能性もある。

5大学とも都心を離れたキャンパスがある

―MARCHはすべて「東京の私大」ですが、キャンパスの雰囲気は違いますか?

一口に「東京の私大」といっても、キャンパスの立地によって生活スタイルや友人関係は大きく変わってくる。

中央の文系学部のキャンパスは郊外だし、法政も3つのキャンパスのうちの2つは郊外の立地。明治、青学の理系学部や、立教のいくつかの学部も都心から離れた場所にキャンパスがある。

MARCHは全て複数のキャンパスがあり、学部によってキャンパスが異なる「学部割れ」大学なので、志望する学部のキャンパスの「環境問題」はしっかり検討しておくべきだ。

―キャンパスに関して、学生のイメージギャップが大きい大学は?

「思ったより田舎だった」という学生の声が多いのは、中央の多摩キャンパス(法・総合政策・経済・商・文・国際経営)。

都心からは電車とモノレールで1時間程度かかり、「東京は晴れでも中大に着いたら雪が降っている」(学生の声)というのが、あながち冗談ではなかったりもする。

近くには立川など大きな街もあるが、いわゆる「都会」ではないので、地方の学生が「都会のキャンパスライフ」を夢見て入学するとがっかりしてしまうことも。ただ、ついに都心回帰に向けての動きが始まり、法学部は2023年に茗荷谷駅前の新キャンパスに移転予定。

今後、他の学部も都心に移転することになれば、MARCHの中での位置づけが変わってくる可能性もある。なお、理工学部は後楽園キャンパス、国際情報学部は市ヶ谷田町キャンパスで学ぶ。

法政には「秘境」がある

―ほかに郊外の雰囲気のキャンパスは?

法政の多摩キャンパス(経済・社会・現代福祉・スポーツ健康)も負けていない。

新宿から京王線の特急で約40分のめじろ台駅からバスで山道を10分揺られ、やっとたどり着ける、別名「秘境キャンパス」。周辺にはコンビニが1軒あるだけで、のんびりとした時間が流れている。

法政は小金井キャンパス(理工・生命科学・情報科学)も郊外の住宅街にあり、存在感は薄め。この2つのキャンパスと、山手線のど真ん中にある市ヶ谷キャンパス(法・経営・文・国際文化・人間環境・キャリアデザイン・デザイン工・グローバル教養)では、雰囲気がかなり違うので注意してほしい。

明治は学年と学部でキャンパスが変わる

―明治はキャンパスが4つありますが、どんな違いがありますか?

明治は4つのキャンパスがあり、「学部割れ」に加えて、文系学部(法・商・政経・文・経営・情報コミュニケーション)の1・2年次は和泉キャンパス、3・4年次は駿河台キャンパスで学ぶという「学年割れ」もある。

和泉キャンパスは、若者の街・下北沢や渋谷、吉祥寺へのアクセスも便利。駿河台キャンパスの中央にそびえる地上23階・地下3階建ての「リバティタワー」は「授業開始・終了時はエレベーターが超混む」と言われる一方で、「最上階からの眺めは最高」との声も。

理工学部と農学部は小高い山の上にあり自然に恵まれた生田キャンパス、国際日本学部と総合数理学部は産官学連携によるまちづくりが進む中野キャンパスで4年間学ぶ。

立教はおしゃれな池袋とのどかな埼玉で雰囲気ガラリ

―立教と青学は、おしゃれそうなイメージが強いですが、実際は?

立教と青学も、2つのキャンパスがある「学部割れ」大学。

この2つの大学はミッション系なのでキャンパス内にチャペルがあり、礼拝も行われている。

立教と聞いて多くの人がイメージする「ツタの絡まる建物がオシャレなキャンパス」は、デパートや劇場・映画館、飲食店など何でも揃う池袋西口からほど近い、池袋キャンパス(社会・法・文・経済・経営・理・異文化コミュニケーション)のこと。

埼玉にある新座キャンパス(観光・コミュニティ福祉・現代心理)は、池でカモやカメが遊ぶ様子をゆったり眺め、芝生で日向ぼっこもできるようなのどかな環境にある。

青学のTHE都会な青山キャン、4学部は神奈川に

―青学は2つキャンパスがありますが、どんな違いが?

青学も、最先端のブランドショップが立ち並ぶ表参道にある青山キャンパス(国際政経・文・法・経済・経営・教育人間科学・総合文化政策)と、渋谷から電車で約1時間の神奈川県の住宅街にある相模原キャンパス(理工・社会情報・地球社会共生・コミュニティ人間科学)ではかなり雰囲気が違う。

青山キャンパスは立地柄、憧れの都会生活を謳歌する学生も多いが「通学途中に寄れる店が多いのは便利だけど、遊んでいるわけではない」という声も。

相模原キャンパスは人工の川や芝生などが美しく広々としていて、青山キャンパスに通う学生が「さがキャン(相模原キャンパスの愛称)にも通いたかった」と言うこともあるという。

 

 

オバタカズユキさん
フリーライター、フリー編集者。教育・キャリア分野の執筆が多く、1999年から『大学図鑑!』(ダイヤモンド社)を毎年刊行している。著書に『早稲田と慶應の研究』(小学館新書)、『大手を蹴った若者が集まる知る人ぞ知る会社』(朝日新聞出版)など。

『大学図鑑!2021 有名大学83校のすべてがわかる!』(オバタカズユキ 監修/ダイヤモンド社)
現役学生とOB・OG総勢5000人を超える「ナマの声」を集めて作った、広告・建前・裏取引は一切なしの“真の大学案内”。受験生が知っておきたい内容が満載。2021年3月に2022年版が刊行予定。