信頼していた大人が、自分を性の対象として見ていたとしたら……。高校生のYさんは、突然の出来事にショックを受け今も涙する日々を送っています。身近に起きうる性被害の恐怖を、勇気を出して語ってくれました。

経歴は素晴らしい大人だったけれど

私は性被害に遭うところでした。

ある高校生主体の有志団体に所属していますが、新型コロナウイルスの影響で対面での活動ができず、毎日のようにオンライン会議に参加していました。

団体運営の一人に、サポートとして入っている30代の男性(Aさん)がいました。Facebookの経歴は素晴らしいもので、人当たりがよさそうというのが第一印象でした。

第一印象は「人当たりがよさそう」

突然のメッセ、「会いたい」と言われて

ある日、Aさんからメッセンジャーで「こんにちは」とあいさつされました。同じ団体のメンバーということもあり、不審にも思わず「こんにちは」と返しました。その後「LINEにも送りましたが気が合いそうなので連絡してみました」と送られてきました。

このとき、初めて不審に思いました。LINEにはAさんからのメッセージはありません。「誰かと間違えているのか」と思いながらも、そこには触れずに会話を続けました。

Aさんには「オンラインで話してみたい」などと言われましたが、あるとき、「直接会いたい」と言われました。このとき私は、コロナ禍の中で直接会いたいという言葉に、今度は不審感ではなく、「怖い」と思いました。「もし会ってコロナに感染したら……」と思い、断りました。

しかし、1度に留まらず何度も会いたいと言われました。そのとき、第六感というのでしょうか、「なんとなくこの人とは会いたくない」と思いました。しばらくすると、Aさんからの連絡はぱたりとなくなりました。

性的な危害を与える男だったと知り

学校が始まってしばらくして、団体の代表の高校生からAさんについて連絡がありました。

「Aさんはたくさんの有志団体にサポートとして入り、女の子に手当たり次第連絡して、直接会えたら危害を加えるような人だった。もし、心当たりがあったら教えてほしい」

女性に危害を加える恐れがあるとの連絡が(写真はイメージ)

このとき私は、すでにAさんが危険であることを感じていました。自分のいる場所が特定されてしまうのではないか、自分のせいで家族に何か被害があったらどうしようと、一人で抱え込み、怯えながら過ごしていたんです。団体代表という、情報を共有してくれる人が現れて安心しました。事件が表面化した後、Aさんは団体から去りました。

償ってほしい、でも……

どうにかしてAさんに自分のしていることを反省して、今まで女の子に危害を加えた償いをしてほしいと思うようになりました。しかし壁にぶつかりました。性被害に遭ったことを警察に相談したり公表したりすることにはリスクが伴うということです。それに、私は直接的な被害に遭っていないため、十分な証拠も集められず警察にも言うことができないのです。

これは私たちの団体だけの問題ではありません。同じように苦しい思いをして、毎日怯えながら過ごしている人たちがいます。

まさか自分がターゲットになるとは

私はそんな人たちが声を上げていけるきっかけを作りたい。

被害に遭いかけただけの私ですら、1人で街を歩くことはいまだに怖く、涙する日が多くあります。自分が大人の男性に性的対象として見られていたというショック、身近にそういう行動をする大人がいることへの恐怖を感じているからです。実際に被害に遭った人は、私の何倍も何十倍も苦しんでいることと思います。

以前の私は、自分が性被害のターゲットになるかもしれないなんて、思ってもいませんでした。いきなり暗闇の中に連れてこられて、何をしていいのか分からず、パニックになったような気持ちになりました。何も悪いことをしていないのに、ただ幸せな日常を送りたいだけなのに、なぜ私なのかと思いました。抱えきれない恐怖や不安で胸がいっぱいになり、どうしたらいいのか分かりませんでした。「間違っちゃいない」。「流れた涙は、あなたの経験値」。「きっとうまくいく」。そんな言葉を支えにしていました。

私の場合、団体の代表が寄り添ってくれる人だったから、被害に遭いかけたことを打ち明け、このように記事にすることができたのかもしれません。親にも相談することができました。

助けてくれる人は必ずいる

思い出すのもつらく、被害を打ち明けたり公にしたりしたくないという人もいるかもしれません。誰にも言えず、苦しい思いをしている人もいると思います。でも、声を上げれば必ず助けてくれる人はいます。

もし、この記事をきっかけに性被害撲滅のために立ち上がってくれる方がいたら、感謝します。1人では立ち向かえないことでも、同じ苦しみを味わった人が団結して互いに支え合っていけたら、悲しい思いをする人はいなくなるのではないでしょうか。

助けてくれる人がいると信じてほしい