中村花顯(はなみ)さん(東京・国分寺高校3年)の美術作品「美しくなるための過程」を紹介します。化粧中の自分の顔をリアリティ溢れるタッチで描き、文化部の全国大会の一つである全国高校総合文化祭2020の美術・工芸部門に出展しました。どのように制作したのかを聞きました。

「美しくなるための過程」(第44回全国高等学校総合文化祭 2020こうち総文 美術・工芸部門出展)

きれいになるための化粧なのに…

―メイク中の表情がリアルに表現されていますね。どんな思いを込めて描いたのですか?

私は毎朝化粧をします。ある日「私は美しくなろう、きれいになろうとして化粧をしているのに、化粧の最中の顔は、とてもではないけれど人に見せられないものになっているのではないだろうか」と気づきました。

その矛盾と言えるような面白さを絵で表現してみたいと思い、「化粧中の変な顔」というのをテーマに描きました。

恥を捨て「盛大に変な顔に」

―こだわったり工夫したりしたポイントを教えてください。

いかに「酷い顔」であるかということを伝えるために、描く顔は全て恥を捨てました! 思い切って盛大に変な顔になるように、実際の顔を忠実に再現できるように工夫しました。

顔のインパクトをより強めるために髪の毛を描かず、画面いっぱいに顔を描写しました。また、真ん中に鏡のシートを貼ることで、「化粧」というテーマをより伝えられるようにしました。

―苦労した点は?

自分の顔を8個も描くのはかなり大変。だんだん「自分は何をしているのだろうか…」という気持ちになっていきました。

普通の表情でなく、メイクをしているときの独特の表情を描写するのはかなり難しいんです。そのような表情は全て自分の表情、というのも描いていて冷静になると、少しつらかったです。

部活の両立で多忙「家で寝ないで描いた」

―制作途中で印象に残っているエピソードは?

私は美術部の他に、コーラス部にも所属しているのですが、コーラス部の活動と作品の出展のための制作活動を両立させるのは大変でした。しかもコーラス部の方の地区大会、中央大会と時期が被っていたので、他の人より制作時間が短く、締め切りのギリギリまで終わりませんでした。

そのため、何回も大きなキャンバスを電車で持ち帰って、家でも寝ないで描きました。

―よい作品を作るためのコツを教えてください。

よい作品を作るためには、やはり「テーマ」をしっかりと固める、ということが大事です。上達のためには絵をひたすら描いて経験を積んでいく、というのはもちろん、絵を描くときにちゃんと考えながら描く、というのが大事だと思います。