東京工業大学は、2016年度から大規模な教育改革に乗り出す。学部と大学院を「学院」という新たな組織に統合し、一貫教育を行うのが改革の柱。日本初の試みだ。学年や学部・大学院の区別を超えて学ぶことができ、これまでより短期間で大学院を修了することも可能になる。カリキュラムや教育方法も見直す。専門性とリーダーシップをもった理工系人材を育てるのが狙いという。(西健太郎)

東工大の1年生は、「理学」「材料」といった分野ごとの7つの「類」に分かれて学び、現在は2年生進級時に3学部・23学科のいずれかに進学する。大学院は6研究科・45専攻があり、学部と大学院は直接対応していなかった。東工大の学部卒業生の9割が大学院に進んでおり、学部と大学院の組織を一体化することで、学部入学から大学院修了まで、学生の関心や能力に応じた学び方を可能にするのが改革の狙いだ。

柔軟な学びを可能に

学院の中に置く17の「系」は、緩やかな枠組みだ。教育担当の水本哲弥副学長は「学生の学び方の選択肢が広がる」と狙いを話す。例えば、工学の材料分野を学ぶ学生の場合、これまでは、2年生の時点で「金属工学」「有機材料工学」「無機材料工学」といった学科に分かれたが、来年度からは大くくりにした「材料系」に所属する。学生の希望に応じ、金属工学を深く学ぶこともできる一方で、各分野を広く学ぶことも可能だ。

改革の背景の1つは、多くの学生が卒業後に就職する産業界の状況だ。製造業などに就職したとしても、大学で学んだ狭い専門とは違った分野の部署に配属されることは珍しくない。幅広く学んだ経験は就職後も生きるというわけだ。

高校卒業後5年で修士課程修了も

新制度のもう一つの特徴が、「達成度評価」の導入だ。学年ごとに学ぶ科目が決まっていたのを改め、節目ごとの評価で達成度が認められれば、先の内容を学べるようにする。卒業研究を入学後3年半で終えて、修士課程レベルに進むことが可能になる。さらに修士課程を1年半で終えれば、高校卒業後5年で修士号を取得できる。「そのような学生が10%は出てほしい」と水本副学長。博士課程を2年で終えることもできるという。一方、大学院課程に進まず、4年で卒業することも可能だ。

4学期制、留学しやすく

また、4学期を導入し、必修科目を置かない学期を設けることで、学生が留学しやすくする。「就職すれば海外勤務があり、研究者の学会では英語で討論することは当たり前。修士課程修了までに全員に海外を経験してほしい」と水本副学長。

このほか、論文の執筆やコミュニケーション力、リーダーシップを育てる授業も強化し、英語による授業を増やす。教員の教え方を改善するための研修会を頻繁に開いているという。