東播磨高校(兵庫)放送部は、昨年の全国大会で優勝を飾った強豪だ。だが、新型コロナウイルスの影響で今年の大会が中止となり、3年生部員は最後の大会への出場かなわぬまま6月で引退。同部の新部長となった山本彩愛さん(2年)に、現在の活動状況や胸の内を聞いた。

休部が続き「これはマズい」

―新型コロナウイルスによって放送部の活動はどのように変わっていきましたか。

活動日や活動時間に制限がかかり短くなりました。コロナの影響で学校が休校の時はまったく活動ができませんでした。

部長の山本彩愛さん(2年)

コロナが話題になり始めた当初、私は「騒いでいるけど、すぐにおさまるだろう」くらいに思っていたんです。4月になれば部活が普通にできるようになるだろうと。でも、新学期が始まることなく休校、休部が続いて「これはマズいかも」という不安な気持ちに変わっていきました。

休部中の期間は、家で朗読の自主練をしていました。ただ、自宅は思いっきり声を出せる環境ではなく、1人で練習してるとつまらなくなってくるので、早く部員のみんなと一緒に練習したいなという思いが募っていきました。

フェイスシールドで飛沫対策

―自粛期間が終わり、部活が再開してから普段の練習はどのように変わりましたか。

先輩と後輩がペアを組んで行う読みの練習では、上級生部員が新入部員の関西弁を標準語のアクセントに直すなどの基礎を教えています。この練習をする時は、お互いに必ず「フェイスシールド」を付けるようになりました。マスクをしたままでは口の動きが見えないので、このような(飛沫)対策をとっているんです。

フェイスシールドを付けて読みの練習

フェイスシールドを付け続けていると顔のまわりに熱がこもってくるので、これからの季節はちょっと大変かもです(苦笑)。

毎度マイクのアルコール消毒

―ほかに変わった点はありますか。

マイクを使用した際には、その都度、マイクのアルコール消毒をしています。

マイクを使ったら1回ごとにアルコール消毒

大会本番を想定し、マイクに向かってアナウンスや朗読の練習をしているのですが、部員の1人がマイクの前での練習を終えたらアルコール消毒してから、次の人がマイクを使います。このようなコロナ対策は、部活が再開した6月から取り組んでいるので、習慣づいてきました。

目標失い現実味がない…

―4月に放送部の全国大会「NHK杯全国高校放送コンテスト(Nコン)」の中止が決定しました。みなさんの部は「Nコン」に2015年から5年連続出場中、昨年は全国優勝も経験しています。大会の中止が発表された時はどんな心境でしたか。

私たち部員は、顧問の先生からのメールで「Nコン」が中止になったこと、Nコンの代替となる県大会(6月20日実施「2020兵庫大会記念高校放送コンテスト」)が開かれることを同時に知らされました。Nコンは私たちの部の一番の目標。Nコンを目指して頑張ってきた成果を発揮できなくなり悲しくなりました。あまりに突然の発表だったので、中止とは分かっていても、私はしばらく現実味を感じられませんでした……。

―「Nコン」の中止を部員たちはどう受け止めていましたか。

みんな悲しんでいました。最後の大会がなくなってしまった3年生の先輩方の気持ちを考えると、私たち後輩部員には到底分からないほど悔やんでいるんだろうなと……。

(例年どおり)6月末に3年生部員の引退式を行ったんです。その場でもNコンの中止を聞いた時には「泣いて落ち込んだ」と話す先輩もいました。

部全体がちょっと暗くなり

―大会中止を悲しむ部員が多い中、部長としてどのように部をまとめているのでしょうか。

活動が再開した6月中はNコンの中止を引きずってか、部全体がちょっと暗いなと感じたこともありました。ですが、3年生の引退を機に、私だけじゃなく2年生部員は気持ちを切り替えました。「これからは自分たち2年生が部を頑張って引っ張っていかないと」という心境なんです。

秋には大会が予定されているので、今はそこに向けて部員たちは番組制作に取り組んでいきます。私自身、部長になってまだ日が浅いですが、部員1人1人が楽しく部活ができるようにしっかり導いていきたいです。

ゆったりしている暇なんかない

―コロナ以前と比べて、部活への向き合い方や、山本さん自身の心境に変化があれば教えてください。

高校3年間って、もっと長いと思っていたんです。部活もそんなゆったりした気持ちで取り組んでいて、「この作業は明日でもいいか」「この練習は後回しに」なんて日もありました。

ですが、コロナの影響で何カ月も部活ができなくなって、「ゆったりしてる暇なんてない!」と気持ちを引き締めました。私は、人に伝わるような朗読の力を磨いていきたいので、その日できることを一生懸命、全力で取り組んでいきたいと思っています。

次に向けて頑張る部員たち

―部は今、何を目標にして活動していますか

やはり「Nコン」です。私たちにはまだ来年チャンスがあります。私が1年生の時、Nコン全国優勝というすごい景色を見せていただきました。そんな先輩方に追いつけるよう、「私たちの代もすごかったね」と言ってもらえるよう、「目指せNHKホール(「Nコン」決勝の舞台)」を目標に頑張っていきます!

1974年創部。部員29人(3年生10人、2年生11人、1年生8人)。練習は週5日。2019年「NHK杯全国高校放送コンテスト」ラジオドキュメント部門で文部科学大臣賞(1位相当)。「2020こうち総文」放送のアナウンス、朗読部門に出場(5年連続13回目)。