新型コロナウイルスの影響で、例年とは大きく異なった形で大学生活が始まりました。講義はオンラインに移行し、多くの大学でいまだにキャンパスに入れない状況が続いています。いま大学生はどのように過ごしているのでしょうか。大学1・2年生に話を聞きました。(福元まりあ)
オンライン授業のメリット・デメリットとは
講義のオンラインへの移行が進むなか、ネット回線が不安定、画面を見続けて目が疲れてしまうなど、不便な点が多く挙げられています。その一方で、通学時間がなくいつでもどこからでも受講できるなど、利点も多くあります。
大学生からは、さまざまなメリット・デメリットについての意見が寄せられました。
自分の生活リズムに合わせて受講できる
オンライン授業は、Zoomなどのウェブ会議システムで配信される「リアルタイム形式」と、録画された講義動画を視聴する「オンデマンド形式」で実施されることが多いようです。
まず大学生から挙げられたメリットは、通学の必要がなくなったことです。1限の講義に間に合うよう早起きをして満員電車に乗る必要がなくなり、通学時間をレポート作成などにあてられるようになったという声があげられました。
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1限の授業に間に合わせるために準備をして、満員電車に乗って通学しなくて済むのはとてもメリットだなと感じています。(2年)
朝の満員電車に乗る必要も無く、服を選ぶ時間もいらず、効率よく勉強できる。(1年)
通学の時間を課題にあてられる。(1年)
登下校時間がないため自由に使える時間が増え、趣味や新しいことに挑戦することができました。(2年)
家だからこそ 集中できて効率がよく学べる
自室など、自分の集中できる環境で学ぶことができるのはとても良いですね。「オンデマンド形式」の講義は何度も動画を再生できるため、わからないところを見直して復習にも役立ちそうです。
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キャンパスでの講義は、周りに友達がいる分少し気が散ってしまったり、教授のペースに追いつかなかったりするところもありますが、講義動画はもう一度再生できて自分のペースで濃い学習ができていることもメリットだと思います。特に自分の興味のある科目だと、資料を細かく見たり疑問を調べたりできていると実感しています!(2年)
自室でイヤホンをつけて講義を受けているため、実際の講義よりも集中しているように感じます。(2年)
顔が映らないので、授業中に好きなだけ辞書を引いたりネット検索ができたりして、学習効率が非常に良い。(2年)
チャット機能が便利! 対面講義より活発に質問や発言ができる
またメリットとして挙げられたのが、チャット機能です。
授業ごとに設けられている掲示板やZoomなどのチャット機能を使って、講義の担当教授に直接質問ができるようになっているそうです。「リアルタイム型」の講義では、手を挙げて発言するのではなくチャット機能に直接書き込むことで、教授がその場で書き込みに反応してくれる講義もあるようです。
対面の講義の場で手を挙げて発言するのは少しちゅうちょしてしまう場合もありそうですが、チャット機能に書き込むことで、質問や発言がしやすい環境になっているようですね。
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「Webclass」という名前のオンライン学習システムでオンデマンド授業を受けるのですが、それぞれの科目のフォームから先生に気軽に質問や要望が送れるようになっています。個人的なチャットなので、他学生に見られる心配もありません。また、履修中の全学生が見ることのできる質問フォームも常時開設されており、名前が見られても問題ない学生はそこで質問をし、疑問を共有しています。(2年)
大人数の授業では生徒が自由にチャットボックスを使っていいことになっています。マイクオンにして発言するのはためらいますが、チャットだと率直に思ったことを「つぶやき」、そのつぶやきを拾って話す先生もいらっしゃいます。インスタライブのように双方向でとても楽しいです。オンラインならではだと思います。(2年)
チャット機能を活用している。手を挙げる必要がないので、対面よりも活発に質問や意見交換が行われている。(2年)
授業動画視聴や課題をためてしまう……メリハリが大切
以上のようにさまざまなメリットが挙げられましたが、オンライン授業はすべて自分次第です。
キャンパスでの試験が実施できないことから、例年と比べて課題が増えたという声も聞かれました。講義動画の視聴や課題など、自分でしっかりと計画を立てて取り組むことがますます求められているようですね。
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デメリットは、メリハリの面で感じています。メリットの裏返しで、自分ペースな分、自分自身を律さないとオンデマンド授業をためてしまうこともあります。キャンパスの授業ですと必然的に授業を受けるのでそのようなことはめったにないと思います。私もためないようにはしていますが、「前期がオンラインならば多めに単位を取りたい」と思いたくさんの教科を履修しており、ためてしまっている科目もあります……。(2年)
生活習慣が昼夜逆転になってしまう傾向がある。また、集中力の維持にかける。オンラインは対面とは違い相手が何をしているのか分からないため、授業中にSNSをやることが当たり前のようになってしまった。友達と情報共有のために始めたものが雑談になってしまったり……。(1年)
課題がたまりがち。決まった時間に授業を受けないので、生活習慣が堕落してしまう。(2年)
課題が多すぎて常に課題に追われる生活なので、先生たちにはもう少し他の授業の課題があることも考慮してほしいです。(1年)
自分は4年で卒業できるの? オンライン授業では補えない不便さ
少人数のグループワークや実習などは、オンライン授業で完全に代替することは難しいです。また、図書館などキャンパス内の施設への立ち入りがいまだにできない大学も多くあります。
オンライン授業だけでは補えない部分を今後どのようにカバーできるのか、不安の声が聞かれました。
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服飾系の学科で学んでいます。「立体裁断」「和服造形」等の実際に服を作る工程を学ぶ実習が多いです。そのため、オンライン授業では補えない点がかなりあるためとても不便です。そういった授業は説明のみされ、実際には行われていません。(1年)
自分が4年で卒業できるだろうかってことが心配です。授業もオンデマンドで、3分の2程度しかできていません。理系分野というのが原因ではあるかと思いますが、講義だけでは補えない部分があり、それを今後カバーできるかどうか不安で仕方ないです。(1年)
少人数の講義をとっているため、どの授業もグループワークを頻繁にしていたのですが、それがやりづらくなったのが残念です。(2年)
図書館に自由に行けなくて困っている。資料が手に入りにくくレポート執筆もより大変になったし、図書館の代わりになる静かで集中できる学習場所もない。図書館だけでも開けてほしい。(2年)
図書館などの施設を利用したい。だが、たくさんの人が入ると感染の不安もある。予約制にするなどしてキャンパスの施設を利用できるようにしてほしい。(2年)
やっぱり友達に会いたい! 普通の大学生活が恋しい
キャンパスに立ち入ることができなくなり、授業形態のみならず大学生活も大きく変わりました。1年生はまだキャンパスに通ったことがなく、「友達がいない」と不安を抱えているそうです。やはり普通の大学生活が恋しくなってしまいますね。
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1年生のため友達がいないので、とても発言しにくい状態です。自己紹介だけで良いので同級生と話し合いを持つ時間があれば、少しはみんなの前でも発言がしやすくなると思います。(1年)
対面授業で友達と会う普通の大学生活が恋しいです。(2年)
空き時間に先生を捕まえて専攻や留学の相談がしたかったができない。(2年)
授業のなかには誰かと一緒に学んだ方がいいものもあるので、週1か2くらいで登校できたらいいなと思います。(2年)
意見を交わす場はほとんどありません……。(1年)
また、サークルや部活動などは新歓ができず、活動がストップしてしまっているところもあるようです。その一方で、TwitterやInstagramなどのSNSでの広報活動に力を入れたりZoomで新歓をしたりするなど、さまざまな工夫をして活動を継続させているサークルもあるそうです。ただ大規模なイベントの開催はできないため、今後の運営にはまだまだ不安が残りますね。
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サークルでの活動がストップしてしまい、このまま例年のような行事ができないのかわからない。(2年)
来年部活で幹部になるが、そのために済ませなければいけない過程が今ストップしているので、来年に間に合わせちゃんと部を運営できるか不安。(2年)
コロナを経て今後の大学生活はどうなる?
コロナウイルスの影響で大きく変わった大学生活。時間と場所を問わずに学ぶことができるオンライン授業にも、メリットもあれば解決すべき課題も多くあります。また、一緒に学んだりサークル活動などをしたりできる場も、再開の見通しは立っていません。
今後の大学生活はどのように変わっていくのでしょうか。学び、人が出会い交わる場としての大学の機能を、いま一度それぞれが考える大きな機会かもしれません。