高校3年生の旭さんは、昨年留学しました。出国直前に父の病気が発覚し、悩み、葛藤した経験を打ち明けてくれました

父を優先するか、留学するか……

私は、生まれ育った日本から、海を越えて遠く離れた寮に入ることが決まっていました。将来の夢をかなえるために、自分の意志で親元から離れることを決めましたが、それは家族や友人、周りの人たちの支援があったからこそ下すことができた決断でした。

海を越えて遠く離れた寮に入ることが決まっていた(写真はイメージ)

ところが出国直前、私の父親に病気が見つかりました。もちろん父は「一度決めたことなんだから、最後まで自分の目標を完遂してきなさい」と、私を快く送り出してくれましたが、そのとき父は、一刻の猶予も許さない状態だったのです。

これまで無条件に愛し、育ててくれた父の元から離れてよいものなのか、自分の目標だけを優先して、万が一のときに後悔するんじゃないかとかなり悩みました。しかし悩んでいる間も時間は待ってくれず、もう後戻りができない時期になってしまいました。

弱る父を見るのがつらくて

出国前、勉強や寮生活の準備があるということを言い訳にして、父が入院していた病院が実家のすぐそばだったにもかかわらず、私はお見舞いに行くのを怠りました。どんどん弱っていく父の姿を見るのがつらくて、時には父に冷たく当たり、自分の人生を最優先して、私は一番近くで苦しんでいる人に対して見て見ぬふりをしてきました。

父は今も必死に病気と闘っています。そして、私もそのときの後悔を抱えながら、日本や父のことを思いつつ寮生活を頑張っています。

父や日本が恋しくなったときは空を見上げている

後悔しない決断をしたい

人生は「その時にならないと分からない」ことが多くて難しいな、と初めて実感しました。でも、大切な人との別れは早かれ遅かれ必ずくるということは、誰もが知っています。

自身のこの経験を通じて感じているのは、悲しみを乗り越えられないつらさよりも、「あの時にこうしていたらよかった」という後悔のほうが、何億倍もつらいということ。

これからは、私を必要としてくれる人がいるならば、できるかぎり寄り添いたいと思うし、その時々で後悔をしない決断をしたいです。これから先、どんなことが待ち受けているのか分からないけれど、どんな時でも笑顔で生きていきたいと思います。ありふれたことなのかもしれないけれど、それが父も望むことだと思うから。(高校生記者・旭=3年)