ライトノベルが大好きな高校生記者・鈴木とこー君はこれまでに200冊以上のラノベを読んでいます。そんな彼がおすすめする『青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。』を紹介してもらいました。
とにかく「負けている」男子高校生が主人公
『青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。』(ガガガ文庫、630円=税抜)
突然ですが、あなたは『シンデレラ』のおとぎ話をどう思いますか? かのガラスの靴を履く少女は、「美しい」と本当に思いますか?
もし、この問いの答えに迷ったのなら、もしくは迷わなかったけれども興味を持ったのなら、今回ご紹介するライトノベル『青春絶対つぶすマンな俺に救いはいらない。』をぜひ読んでいただきたいと思います。
この作品で強く押し出されていくのは、「救い」と「敗北」です。そして、それらを象徴するように、主人公である男子高校生・狭山明人は、とにかく「あらゆることに負けている少年」です。
勉強でも負け、運動でも負け、友はいなくて、当然のように恋人もいない。かといって性格がいいわけでもない。正真正銘、クズな負け犬。そんな彼を、とある少女が更生(作中では“救済”と言っています)しようとするところから物語が始まります。
努力する姿を嫌悪、嫉妬……
その後、登場人物たちの中には、何かしらで負けている人が何人かいます。
多くの作品では、その負けた状態からはいあがっていこうとするでしょう。「失うものはもうないんだから後ははいあがるだけだ」的なせりふというのは、昨今の創作物ではありふれたものでしょう。決してありふれたものが悪いとは言いません。諦めずに進んでいった結果、たどり着けるものというのがあるのだと思います。
しかし、この作品はそうはしません。それどころか主人公は「諦めずにはいあがり、日々努力している人たち」に対して、嫉妬や嫌悪すら抱くのです。
「自分を肯定してもいいんだ」
この作品を読んで感じることは、他の作品以上に多種多様なのではないかと思います。僕はこの作品を読み、「自分を肯定してもいいんだな」と感じました。
諦めちゃいけない、夢に手を伸ばさなきゃいけない。そういう感情はあるはずなのに、弱い自分に負けてしまうどうしようもない自分。誰もが抱えているはずの心のマイナスな部分を肯定することは、甘えと呼ばれてしまうかもしれません。けれども、その甘さだけじゃなくて苦さも受け入れる生きざまは、案外悪いものじゃないのではないか、と考えました。
高校生活に挫折してしまった方、挫折しそうな方、そもそも挫折するような何かすらないような方。さまざまな方に読んでいただきたい名作です。
前述した『シンデレラ』について、もしくは自分のこれまでの経験について思いをはせながらぜひ読んでください。(高校生記者・鈴木とこー=2年)