4年に1度の米国の大統領選挙が始まった。投票日は2020年11月3日の予定だ。米国の国家元首はどのように選ばれるのだろうか。仕組みを基礎から解説する。

「指名争い」「本選」の2段階

Q 候補者はどう決まるの?

大統領選は、二大政党の共和、民主両党が候補を絞り込む「指名争い」、両党候補の一騎打ちとなる「本選」の二段階で行われる。指名争いでは、米全土で順次開かれる党員集会や予備選を通じて、両党がどの候補を推すか決める。

党員集会は主に議論を通じて、予備選は投票によって、候補者が各州に割り当てられた「代議員」の獲得数を争う。代議員は地域の代表として本選に臨む党候補の投票権を持ち、夏の党大会で正式に投票。代議員の過半数を獲得すれば正式に党候補となる。

共和党は再選を目指す現職のトランプ大統領が8月の党大会で指名されるのは確実。焦点は民主党の候補者で、7月の党大会で正式に指名される。

2020年の米大統領選挙の日程

Q 「代議員」とは?

民主党の場合、「一般代議員」に加え「特別代議員」がある。一般代議員は全米各州で行われる予備選と党員集会の結果に基づき、候補者に投票する。特別代議員は党幹部や州知事、連邦議会議員で構成される。誰に投票するかは自由で、支持候補を途中で変えることもできる。

1960年代までは政党有力者が候補を選んできたが、民主党は民意を反映させるため70年代前半から一般の代議員が候補を選ぶ制度を導入。その後、有力者の意見も重視すべきとの声が強まり、80年代に特別代議員の制度ができた。民主党の場合、一般代議員が3979人、特別代議員は771人となっている。

民主党大会では、第1回投票は原則として一般議員だけで投票が行われ、過半数を獲得した候補がいれば、特別代議員は投票しないまま氏名が確定。過半数の候補がいない場合は特別代議員が加わる第2回投票が実施される。

現職トランプ大統領と争うのは

Q トランプ氏に挑むのは?

民主党の候補者指名争いは、中道穏健派のジョー・バイデン前副大統領と最後まで争っていた左派バーニー・サンダース上院議員が撤退を表明、バイデン氏の指名獲得が確実になった。長年の実績に裏付けられた安定感のある政策や、品格ある人柄が評価された。バイデン氏は弁護士などを経て上院議員となり、司法委員長や外交委員長の要職を歴任、オバマ前政権で副大統領を務めた。ただ、サンダース氏を支持した若者らからは「古い政治家」と見られており、新味のなさをどう克服するかが課題となる。

投票日は11月3日、新型コロナの影響危ぶむ声も

Q 本選はいつあるの?

11月3日に即日投開票される本選では、有権者が全米50州と首都ワシントンで人口に応じて割り当てられた「大統領選挙人」538人を選び、選挙人総数が過半数の270に達した候補が当選となる。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、民主党候補指名争いの日程が一部延期されるなど異例の展開となっている。米国史上、大統領選が延期や中止された例はないが、本選が予定通りできるか危ぶむ声も出始めている。

(共同通信編集委員 遠藤一弥)