俳優の戸塚純貴さんは、自動車やバイクの整備に没頭した高校時代を過ごしていた。好きなことなら夢中になれる。そう自覚する戸塚さんに、高校時代にやったほうが良いことは何か、目標を見つけるにはどうすればよいかメッセージを送ってもらった。(文・中田宗孝、撮影・幡原裕治)
車やバイクいじりに熱中
――高校時代はどんな学校生活でしたか?
自動車整備の専門的な技術を習得する学科の高校生でした。学校では車をイジることが多かったです。授業ではあるんですけど、僕にとって自動車やバイクが当時熱中した「遊び」でもありましたね。
友達と一緒に原付バイクをカッコよくカスタムして、バイク雑誌に投稿しようと計画を立てたことがあるんです。みんなで「このパーツを使えばカッコよくなるんじゃないか」なんて、一生懸命に試行錯誤を重ねて……結果的には、バイク雑誌への掲載はかないませんでしたけど、それが僕らの高校時代の青春でしたね。
男子校状態でモテなかった
――友人たちと楽しく過ごしていたんですね。
はい。学校では男同士でバカなことばかりやっていました。
共学ではあったので、他学科に女子はいたけど、僕のクラスには一人もいない。だから僕の周りは常に男子校状態。女子との接点がないから、もちろんモテるはずもなく、それは大問題でしたよ!
制服よりも作業着姿の方が多い男子集団は、女子にとって近寄りがたかったかな(苦笑)。本音は当然、女子と仲良くしたいって思ってました。でもなんか頑固になってて「女の子よりバイクだ!」みたいな。その姿勢がカッコいいって雰囲気が男子の中でできあがってましたね。かなり後悔しています。
好きならば続けられる
――高校生のうちにやっておくと良いことはありますか?
勉強をしなくちゃ、部活を頑張らなきゃと自分の可能性を広げるためにいろいろなことに挑戦しなきゃいけないと焦る時期ですよね。ですけど、自分の苦手なことに時間を費やすぐらいなら、好きなことに倍の時間を費やした方が将来につながると僕は思う。
高校生の頃の僕は、勉強はまったくだったんだけど……自動車のことならエンジンの仕組みとか難しいことでも覚えられた。今振り返れば、僕はモノづくりが好きだったんです。それは今の僕と変わらなくて、モノづくりが好きだから、俳優の仕事が好きだから続けている。
自分の好きなことを追求していても、そこで課題や壁に必ずぶち当たる。でも、好きなことだから、それが苦じゃないんですよ。それを乗り越えるために考える時間も楽しく感じられるんです。
自分と違うタイプの人と話してみて
――好きなことや目標が見つからない。そんな高校生にアドバイスを下さい。
僕自身は「きっかけ」を大事にしていました。10代の時って、自分の周りにきっかけがたくさん転がっている時期。自分にきっかけが訪れる瞬間を見落とさず、耳を傾け、やってみることです。
――どうすれば「きっかけ」が訪れますか?
誰かと話をするのも聞くのも好きな僕は、人の話から「きっかけ」をつかんでいたのかな。クラスメートの中には、真面目に勉強を頑張る人、バイクに夢中な人、いろいろなタイプがいます。
自分と違うタイプの人の話を聞いてみると、自分が思いも考えもしなかったことが発見できて面白いんですよ。教室っていうすごく狭い世界だけど、色んな人の考えを聞けて、自分の知らないことを知れる「きっかけ」が転がっている。
友達の話を聞いて面白そうだなと感じて自分もやってみようかと思うかもしれない。それが将来の仕事につながることだってありえると思います。
介護福祉士を演じて
――主演映画「ケアニン~こころに咲く花~」は、3年ぶりとなる続編作品。戸塚さんは介護福祉士の役を再び演じています。
はい。今作の撮影前に前作でも訪ねた老人ホームに行ったんです。
着くやいなや老人ホームのスタッフの方に「今から流しそうめんに使う竹を切りに行くから手伝って」と言われて、一緒に竹を切りに行ったり。ほかにも、入所者の皆さんと肉じゃが作りもしました。
前に訪ねた時は、(介護福祉を題材にした映画作品に出演する)俳優としてのゲスト感があったんですけど、それがまったくなくなってましたね(笑)。老人ホームのみなさんが僕をスタッフの一人として接してくれたことがすごくうれしかったんです。老人ホームでの仕事を手伝ううちに、3年のブランクが埋まり、続編につながる役づくりができました。
――劇中、認知症の方と向き合う自然体の演技が印象に残りました。
要介護の人の中には自分の思いをうまく言葉にできない方がいます。その方の目や表情の細かい動きといった小さな機微を感じて僕が言葉を掛け続けるシーンがありました。
「好きなものは何ですか?」「おいしかったですか?」と、いろいろな話題を明るく元気にしゃべり続け、相手の心が一番動くポイントは何なのかを探し続けるんです。相手のセリフがないので僕がその分2倍の量お話をします。とにかく沈黙が怖かったんです。
――それは演技を超えて実際の介護の現場でも実践できることですね。
そうだと思います。会話をする、声を掛け続けることは“ケアニン(介護、看護、医療などの現場で働く人を総称した造語)”にとってとっても大切なことなんです。僕もあらためて学ばせていただきました。
Q&A 週1ペースで油そば
Q.カバンに必ず入っているアイテムは?
A.カバンをなるべく持たないようにしているんです。いろいろ持ち歩くのが苦手で。荷物は最小限に抑えたいタイプなので、マストアイテムはありません(笑)。
Q.最近ハマっているグルメを教えてください。
A.油そば。うまいんですよ。太るかなとかは全然気にせずに食べちゃう。今は週1のペースで食べていますね。
Q.行き詰まった時の気分転換は?
A.サウナですっきり汗をかく。だけど高校生のみなさんからすると、ちょっとおじさんな気分転換法だよね(苦笑)。
Q.もし高校生に戻れるなら何をしたい?
A.恋がしたい! デートじゃなくても、放課後、女子と一緒に帰るだけでもいい。街で時々、学校帰りっぽい高校生のカップルを見かけるんです。彼らの楽しそうな様子を見ると、この歳になっても「うわー、いいな。うらやましい~」って思っちゃいますね。僕の地元の岩手は、景色がきれいで空気もおいしくて“帰りがい”があるんですよ。
「ケアニン~こころに咲く花~」
小規模の介護施設から大型の特別養護老人ホームに転職した介護福祉士の大森圭(戸塚純貴)。だが、効率やリスク管理を優先する老人ホームの運営方針に戸惑いを隠せずにいた。そんなある日、圭は、認知症の老婦人・美重子(島かおり)の介護を任されるのだが……。 ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開中。公開状況は各劇場のHPを確認ください。配給:ユナイテッドエンタテインメント。共同配給:イオンエンターテイメント Ⓒ2020「ケアニン2」製作委員会
とづか・じゅんき
1992年7月22日生まれ。岩手県出身。2011年、俳優デビュー。17年、映画「ケアニン~あなたでよかった~」で主演を務める。主な出演作は、映画「銀魂2」「ブラック校則」「“隠れビッチ”やってました」などがある。
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