新型コロナウイルスの感染拡大の影響で3月以降高校は休校となり、部活動も多くの学校で停止になりました。この時期、定期演奏会を予定していた音楽系の部活も多いようですが、中止を余儀なくされています。4月の定期演奏会で引退するはずだった読者の高校3年生・らら子さんからのお便りを紹介します。

吹奏楽部は最高の場所だった

私は、中高一貫校である今の学校に入る前に母と見に行った吹奏楽部の定期演奏会を見て、「絶対私もあの中に入って吹きたい!先生に教えてもらいたい!」と思い、入学してすぐに吹奏楽部に入部しました。昔から音楽が大好きだった私にとって、放課後に音楽を存分に楽しめる吹奏楽部は最高の場所でした。家に帰っても吹奏楽曲ばかりを聞き、全国の吹奏楽部で有名な高校を覚え、友達に紹介したりと、いつの間にか吹奏楽オタクになっていました。

部長になり、引退公演を最後の目標に

そんな私は、高校2年生になり、部長になりました。私の学校は中高一貫校で、高校の部長は中学生もまとめなければならないので、とても大変な立場であることは理解していました。しかし、大好きな顧問の先生と同級生、後輩たちのために、自分らしく部を引っ張ろう!と思い、頑張ってきました。

私は、部長になったとき、3つの目標を立てました。1つ目は、吹奏楽コンクールで県大会に出場すること。2つ目は、県内で毎年行われているポップスの大会で、出場校の中で最も音楽性のある学校に贈られる音楽賞を受賞すること。3つ目は、4月の定期演奏会で悔いなく引退することでした。

1つ目と2つ目は、部員全員で努力し、どちらも達成することができました。残すは3つ目だけです。

部内で張り出したメッセージ

新型コロナの影響で引退公演が延期、そして中止に

冬になると、定期演奏会用の譜面がどんどん配られ、スポンサー回りもはじまり、着々と準備が進められていきました。2月になり、だんだん部内がピリピリしていく中、新型コロナウイルスが流行し始めました。

3月になると、学校に行けなくなり、部活ができなくなり、定期演奏会1週間延期することになりました。しかし、その後、もっと感染者が増え、さらに5月に延期し、規模の小さいホールで開くことになりました。

合奏ができない中、1人で楽器を吹くというのはとても寂しく、虚しいものでした。いつもは先生に怒られてばかりですが、先生に怒られたいと思うほどでした。そして私は、「このまま定期演奏会ができなくなったらどうしよう」とずっと思っていました。自分たちの代だけ伝統である定期演奏会ができないのはとても嫌だったからです。

4月になり、感染状況はさらに悪化し続けました。それでも先生は、無観客でも定期演奏会がしたいと連日会議をしてくださいました。しかし案の定、定期演奏会の中止が決定しました。

定期演奏会に向けて準備をしていたが…(写真はイメージ)

悔しくて泣いて、そして気づいたこと

コロナが流行し始めてから、それなりの覚悟はしていたつもりでした。しかし、いざ決定するとなんとも言えない悔しさがこみ上げてきました。生徒全員の安全が最優先でこの結果になったものの、自分たちの代だけこのようなことになってしまったのは、本当に本当に悔しくて苦しくてしょうがありませんでした。

しかし、私はひとしきり泣いた後に気付きました。このことは後輩たちに「定期演奏会ができることは当たり前ではない」ということに気付いてもらう良い機会になったのではないか、と。

私はこのことを、高校生になって初めて気付きました。大きな舞台で吹くことが出来るのも、先生が1年前から予約をしてくださっているからであったり、豪華な演出をすることができるのも、たくさんの企業の方からご協賛をいただいているからであったり、毎日部活をすることができているのも、いつも家族が支えているからであったり…。

本当に当たり前にできていることが当たり前ではないと、高校生になって定期演奏会の運営にかかわっていく中で深く気づきました。気付いてから、たくさんの方々に感謝の気持ちを伝えることができるようになり、1日1日の部活を大切に過ごすことができるようになりました。私は、このことに気付くことは、部活をする上でとても大切なことだと思っているので、後輩たちに今回のことを通して伝わっていればなと思います。

引退の場となるはずだった定期演奏会は中止になった(写真はイメージ)

悔しさは受験にぶつける、後輩に胸をはれるように

最後のステージができなかったという悔しさは、どうしても残りました。だから、その悔しさを受験で晴らせるように、後輩たちに胸をはれるように、しっかり切り替えて勉強しようと思いました。

私は、先生とのやりとりで印象に残っていることがひとつあります。

実は、私は人間関係と自分の部長の立場のことで悩み、学校に行けていなかった時期がありました。それまで私は先生のことを部員同士の人間関係や人付き合いは生徒に任せていて、興味があまりないのかなと思っていました。しかし、私が学校を休んだある日、先生が私と同級生の部員に向かって「次〇〇を孤立させたら廃部にするぞ!」と言ってくださったことを友達から聞きました。

私は、先生は分かってくれていたんだ、人間関係をわかっていたんだ、こんなにも私のことを分かってくれる先生がいるんだ、と思い、何がなんでも休んではいけないと思い、学校に行くことができました。

こんなに生徒思いの、大好きな先生との最後のステージができなくなったことは本当に残念ですが、今は気持ちを切り替え、しっかりと勉強し、志望校に合格して、先生と後輩たちにいい報告ができるように頑張ります!

(高校3年女子・らら子)

読者の声を募集中

この記事を読んで感じたこと、考えたことをお寄せください。また、新型コロナウイルスの影響を受けて休校を延長する高校がある一方で、新学期が始まった高校もあります。あなたの過ごし方や周りの生徒や先生の様子、ほかの高校生に伝えたいこと、聞きたいことなども引き続き募集します。編集部員とお話できるLINE公式アカウント「高校生新聞編集部」にお寄せください。最初に学年、性別、都道府県(できれば)も添えてください