ライトノベルが大好きな高校生記者・鈴木とこー君はこれまでに200冊以上のラノベを読んでいます。そんな彼が「ラノベをあまり知らない人にまずは読んでほしい」とおすすめする「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」(ガガガ文庫)を紹介してもらいました。

多くの人に愛される青春ラブコメ

この作品はファンの間では「俺ガイル」「はまち」と略され、多くの人に愛されている青春ラブコメです。

主人公である比企谷八幡は、友達がおらず、彼女もおらず、「青春とは嘘であり、悪である」とのたまう男子高校生です。そんな彼がとある先生によって奉仕部という部活動に入部させられるところから物語は始まります。

「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」渡航著・小学館・600円

この作品の見どころの一つは何と言っても「偽物とは何か、本物とは何か」ということであるように思います。「ぼっち」である比企谷八幡は、それまでの人生で何度も苦汁を嘗め、色んなものを見てきたことで、偽物を心から嫌うようになりました。例えば、周囲に合わせなくてはならないという同調圧力。例えば、独りは悪いことだという社会通念。例えば、心地が良いからといって甘い嘘を許容しあうような関係。そういう偽物を嫌い、本物こそが欲しいのだと力強く思っている少年です。

では本物とは何なのか。本音を語り合えばそれでいいのか。そもそも「言わなければ分からない」関係は本物なのか。

そうやって関係を作り上げ、疑い、問い直し、それでも本物に手を伸ばそうとする主人公の姿を見ているとはっとさせられます。

「青春とは嘘であり、悪である」

僕は「今、手にしているこの関係は本物なんだろうか」と何度も何度も考えさせられました。手にした居場所というのは心地がいいでしょう。それに何もかもが本物であるなんてことは難しいんだと思います。

そもそも本物がどんなものなのか分からない以上、偽物ばかりになるのはきっと仕方ないんです。でもこの作品を読んで、周囲にいてくれる人のことを正しく認識できるように――100%理解することはできないということを含めて――なりました。

今孤独に苦しんでいる人も、孤独だけど苦しくない人も、友達関係に悩んでいる人も、充実している人も、色んな人が楽しめる作品です。「青春とは嘘であり、悪である」という主人公の考えが、最後にどんな意味を持つのか。そんなところにも注目しながら読んでほしいな、と思います。(高校生記者・鈴木とこー=2年)