立川高校(東京)天文気象部は、約70年前から午前と午後の2回、気象観測を続けている。同部の田口小桃さん(3年)は、未整理のまま残された約50年分のデータを見つけた。大気汚染や環境の変化について、独自に分析した。(文・写真 木和田志乃)
2万件以上のデータを入力して分析
田口さんは1年生の終わりに、1990年代までの約50年分が未整理のまま残されていることを見つけた。
「屋上から遠くを見るのが好きだったので、(どの程度の距離まで見通せるかを示す)視程のデータをまとめてみよう」と思い、発見した同部の記録1万6000件と、気象庁東京管区気象台での記録約9000件のデータをコンピューターに入力してグラフにした。
視界が悪い理由は?
両者を比較して、大気汚染や周辺環境の変化との関連を探った。1950年代から70年代半ばにかけて、同校では視程が4キロメートル未満の日が多かった。1950年代後半に最悪になり、気象庁よりも悪いことがわかった。午前中の視程も悪かった。
現在は、夏以外なら晴れた日は校舎の屋上から36キロメートル離れたスカイツリーも見えるという。「本校の視程が非常に悪かったと分かったのは大きな発見でした。なぜこんなに悪いのか具体的な要因が分かりませんでした」
60~80歳のOBにインタビュー
そこで60~80歳代の卒業生に当時の状況を聞き、視程の悪さがうかがえる写真を見せてもらった。
すると、学校周辺の道路が舗装されていなかったこと、学校近くにある米軍立川基地へ大量の物資を運ぶ自動車の通行量が多かったこと、田畑が多くて朝もやも今よりも多かったことなどが分かり、視程に悪影響を及ぼしていたことが考えられるという。
気象庁の視程は1955年の「都煤煙防止条例」制定以降に改善したが郊外にある同校には影響があまりなかった。60年代以降、道路が舗装され、農地は宅地化され、立川基地は返還されたことなどにより、徐々に視程が改善していったと田口さんは推測している。
今後は「簡単に視程観測できる方法や、後輩が開発しているデジタルカメラを用いた観測方法を検討して、継続して観測できるしくみを作りたい」と語った。