カナダで開催された旅行博。日本のブースを訪れた旅行業者などに日本の魅力をアピールする(写真提供・JNTO)

15年前には500万人程度だった訪日外国人旅行者が昨年、1300万人を超えた。政府は、2020年に2000万人を目指す。日本政府観光局(JNTO)は、外国人旅行者を増やすため、日本の魅力を世界各地で発信している。海外プロモーション部の2人に聞いた。
(山口佳子)

JNTOは、アジアやアメリカなどの世界各地に14の事務所を構え、日本により多くの外国人観光客を呼び込もうと、日本の魅力を発信している。

 「私たちの仕事は、単に日本を知ってもらうことではなく、より多くの外国人に旅行先として日本を選んでもらい、日本経済を成長させることです」と長谷川綾子さんは話す。

ライバル国と差別化

海外に日本をアピールする際は、日本との距離や相手の国民性を踏まえることが重要だ。

 長谷川さんの担当地域は欧米とオーストラリア。これらの地域は、所得の高い層が多いが、周辺に旅行先として魅力的な国々が多い。「距離の離れた欧米から時間や費用をかけても行きたい、と思わせるにはどうしたらいいか」「アジアの中から日本を選んでもらうためには」と試行錯誤を続ける。

 「『旅館』や『和食』など、日本にしかない魅力をアピールし、物価の安いタイや韓国、スケールの大きい歴史的建造物が多い中国などとの差別化を図る一方、中国旅行への乗り継ぎ時に日本に滞在してもらうなどアジアの一国としてのプランも提案しています」(長谷川さん)

「定番」以外もアピール

東アジアを担当する木村威啓さんは「中国からの旅行者は、南京などの内陸都市から来る庶民的な団体客と、北京などの沿岸部大都市から来る富裕層である個人客とに二分しています」と話す。

 「現在の課題は、より自由の利く個人客にリピーターになってもらうこと」。団体旅行では味わえない魅力を伝えるため、「東京」「富士山」「京都」といった定番の観光地以外の魅力を現地で発信していくことに重きを置く。今年は中国で、九州のプロモーションに力を注ぐ。

日本の魅力は「人」

国内観光地で外国語が飛び交うなど、急激な変化に戸惑う高校生もいるかもしれない。

 だが、木村さんは言う。「自然や文化など、日本にはいろいろな魅力がありますが、一番の魅力は、なんといっても『人』。いろいろな国の人たちの違いを受け入れ、おもてなし精神で接することが、日本のファンを増やし、リピーターになってもらうことにもつながると思います」

 

日本政府観光局(JNTO) 14の海外事務所を拠点に、旅行先としての日本の魅力を伝える。海外メディアに広告を出すほか、現地の旅行会社やメディアに日本への視察などを勧める。国内では、地方自治体などの海外向けPR活動の支援をしたり、外国人旅行客の受け入れの質を高めるため、各地の外国人向け観光案内所を認定したりしている。