外国語学部と聞くと、語学だけを勉強するイメージが持たれがち。語学はもちろんだが、地域研究も行い、多言語・多文化に囲まれながら、柔軟なコミュニケーション能力が身につけられる。東京外国語大学言語文化学部長の山口裕之教授に、教育内容について聞いた。(安永美穂)
3年次から長期留学する人も
――留学する人は、どのくらいいるのでしょうか。
外国語学部では、多くの人が在学中に留学を経験しています。東京外国語大では、2019年3月に卒業した日本人学生の75.1%が留学経験者でした。1・2年次のうちは、夏休みや春休みを利用した2~6週間程度の短期留学に参加し、3年次の後半から1年程度の長期留学をするというように、2回以上の留学に挑戦する人も多くいます。
――留学先では、どのようなことに取り組むのでしょうか。
短期留学では、大学で実施される留学生向けの短期プログラムに参加するケースもあれば、一つのテーマを深く掘り下げるスタディーツアーに参加する人もいます。テーマは「インドのスラム地区を訪ねて貧困問題などについて学ぶ」「ニューヨークの国連本部を訪ねて国連の可能性や問題点を学ぶ」など、さまざまです。
長期留学では、現地の学生たちと同じ授業を受けることもできます。大学を休学して、海外の企業が実施する長期インターンシップ(就業体験)に参加するケースもあります。
なお、長期留学(大学間での交換留学等)をするにあたっては、大学での成績や語学力などによる選考が行われます。英語圏に留学する場合は、IELTSやTOEFL iBTなどの試験で、留学先の大学が求めるスコアをクリアしなければなりません。また、英語圏以外の大学でも、専攻する言語で研究計画を書いて提出したり、面接を受けたりすることが多く、十分な準備が必要です。
5年かけて卒業は不利じゃない
――留学して卒業が遅れると、就職で不利になりませんか。
留学先で取得した単位が認められれば、長期留学を経験した場合でも4年間で卒業が可能なケースもあります。ただ、実際には「卒業研究や就職活動に十分な準備をして臨みたい」といった理由から、大学にもう1年在学して、5年間かけて卒業する学生も少なからずいます。
就職活動では「大学時代にどのような目的をもって何を身につけたのか」が問われるので、長期留学をしたことで卒業に5年かかったとしても、「留学の目的は何か」「留学により何を学んだのか」を明確に説明できれば、心配ありません。むしろ自分の学びの経験をアピールできるでしょう。
逆に「留学経験がある」という理由だけで就職に有利になることもありません。留学するにあたっては、自分の中での目標を明確に定めて、それを達成できるように努力することが大切です。
※今回の記事では一般的な名称として「外国語学部」としているが、東京外国語大学は言語文化学部・国際社会学部・国際日本学部の三つの学部で構成されている。
山口裕之教授(東京外国語大学言語文化学部長)
やまぐち・ひろゆき 広島大学附属高校卒業。東京大学教養学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位修得退学。博士(学術)。専門はドイツ文学、表象文化論、メディア理論。ベルリン自由大学に留学した経験を持つ。