外国語学部と聞くと、語学だけを勉強するイメージが持たれがち。語学はもちろんだが、地域研究も行い、多言語・多文化に囲まれながら、柔軟なコミュニケーション能力が身につけられる。東京外国語大学言語文化学部長の山口裕之教授に、教育内容について聞いた。(安永美穂)

英語“で”学ぶ授業も

――語学の授業はどのように行われるのでしょうか。

ネーティブ教員による「話す」「聞く」を中心とした「コミュニケーションを学ぶ授業」と、日本人の教員による文法や読解・作文・リスニングの授業が並行して行われるのが一般的です。クラスの人数は言語により異なりますが、ネーティブ教員による授業は、学生一人ひとりが活発に発言できるように、高校のクラスよりは少人数(数人から20人弱)で行われるケースが多いといえるでしょう。

日本人学生と留学生が交流する場面も多い(東京外国語大学提供)

英語に関しては、英語“を”学ぶ授業のほかに、各地域の文化や社会について英語“で”学べる授業もあり、さまざまな形態で英語に触れることによりグローバル社会で通用する英語力を身につけることが可能です。

なお、1・2年次は語学の授業が週5コマ前後と多く、その他にも必修の科目で時間割が埋まりやすいです。外国語大学・外国語学部以外と比べると「自分で好きな時間割を組める」という自由度は、やや低いかもしれません。語学の習得には継続的な学習が欠かせないため、授業のほかに自主的に予習や復習に取り組むことも必須だといえます。

音楽も食べ物も研究対象

――ゼミでは、どのような研究に取り組むのでしょうか。

専攻する言語によって多種多様なので一概には言えません。ドイツ文化を専門とする私のゼミを例に紹介しましょう。ドイツの文化に関係あることなら、映画・音楽・文学・食べ物・都市・建築など全てのことを研究対象としています。学生の研究テーマはさまざまで、ドイツのボードゲームや、中世の楽器を用いて演奏するロックといったテーマで卒業研究に取り組んだ人もいます。

文学部のドイツ文学専攻に入学した場合、大学によっては文学を基点とした研究が中心となることもあります。外国語学部でドイツ語を専攻した場合は、文学に限らず、より広い視点からドイツについて研究を深めていくことができます。「この地域のことを知りたいけれど、自分がどの分野に興味があるのかはまだ分からない」という人は、外国語学部に進学して、1・2年次に語学や専門の基礎科目を学びながら自分の興味がある分野を探していく、というのも選択肢の一つになるのではないでしょうか。

※今回の記事では一般的な名称として「外国語学部」としているが、東京外国語大学は言語文化学部・国際社会学部・国際日本学部の三つの学部で構成されている。

山口裕之教授(東京外国語大学言語文化学部長)

 

やまぐち・ひろゆき 広島大学附属高校卒業。東京大学教養学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位修得退学。博士(学術)。専門はドイツ文学、表象文化論、メディア理論。ベルリン自由大学に留学した経験を持つ。