外国語学部と聞くと、語学だけを勉強するイメージが持たれがち。語学はもちろんだが、地域研究も行い、多言語・多文化に囲まれながら、柔軟なコミュニケーション能力が身につけられる。東京外国語大学言語文化学部長の山口裕之教授に、教育内容について聞いた。(安永美穂)

語学を基礎に地域研究も

――外国語学部のカリキュラムの特色を教えてください。

大学・学部により異なりますが、東京外国語大学では、1・2年次には自分が専攻する言語を週5コマ(90分授業×5回)程度かけてじっくり学びます。3・4年次はそれまでに身につけた外国語の力を土台として、その言語と結びつきの強い地域についての専門科目を学び、研究を深めていくのが一般的です。

多文化コラボレーションの授業。地域の魅力を伝えるミニ番組を制作(東京外国語大学提供)

地域研究に関する専門科目は、言語・文化・歴史・社会など、自分の興味のある分野の科目を履修します。ただし、大学によっては、入学する時点で学部や学科・専修ごとに「言語や文化を学ぶ」「歴史や社会科学を学ぶ」といった区分がなされている場合もあります。

かつては、これらの専門科目は3・4年次からの履修となるケースが多かったのですが、現在は1・2年次から語学の学習と並行して、地域研究の基礎や概論を学ぶカリキュラムを組んでいる大学も増えています。1・2年次から少しずつ自分が専攻する言語に関する地域への理解を深め、3年次からは自分が学びたい分野を専門とする先生のゼミに所属して、4年次には卒業研究(卒業論文)に取り組むというのが一般的な学び方だといえるでしょう。

複数の言語を学べる

――どの程度の語学力を身につけられるのでしょうか。

東京外国語大の場合は、英語はCEFR(セファール/言語能力を評価する国際指標)でだいたいB2レベル(準1級程度)相当の内容から学び始めます。日常会話のみならず、研究や仕事の場でも通用する高いレベルの英語力を身につけていきます。

英語以外の言語は、多くの人が大学から習い始めるので、単語も文法も基礎から学んでいきます。進度は言語によりかなり異なりますが、入学時にゼロから学び始めた学生たちが、2年次の秋の学園祭では専攻語で劇を上演できるようになります。言語によっては2年次を終えた時点で、CEFRのB1レベル相当まで到達します。

また、複数の言語を学べるのも外国語学部の特色です。例えば、ドイツ語を専攻した場合、ドイツ語の他に学習する言語(いわゆる「第二外国語」)として、英語を学ぶこともできますし、フランス語、中国語、アラビア語など、これまで学習したことのない新たな言語の習得も可能です。

※今回の記事では一般的な名称として「外国語学部」としているが、東京外国語大学は言語文化学部・国際社会学部・国際日本学部の三つの学部で構成されている。

山口裕之教授(東京外国語大学言語文化学部長)

 

やまぐち・ひろゆき 広島大学附属高校卒業。東京大学教養学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位修得退学。博士(学術)。専門はドイツ文学、表象文化論、メディア理論。ベルリン自由大学に留学した経験を持つ。