外国語学部と聞くと、語学だけを勉強するイメージが持たれがち。語学はもちろんだが、地域研究も行い、多言語・多文化に囲まれながら、柔軟なコミュニケーション能力が身につけられる。東京外国語大学言語文化学部長の山口裕之教授に、教育内容について聞いた。(安永美穂)

語学の習得だけじゃない

――そもそも、外国語学部では、どのようなことを学べるのでしょうか。

外国語学部は「語学の勉強をするところ」だとイメージしている人もいるかもしれませんが、学べるのは語学だけではありません。もちろん、他の学部よりも高いレベルの外国語の能力を身につけることが求められますから、専攻する言語は徹底的に勉強する必要があります。

ネーティブの教員と対話をする英語の授業(東京外国語大学提供)

ですが、言語はその後の研究の土台となるものであって、その言語が使われている地域の文化や歴史、社会全般に関する幅広い知識を学んだ上で、興味のある領域についてさらに深く研究していくのが外国語学部の学びです。言語の習得のみならず、地域研究を深めていける学部だということは、ぜひ知っておいてほしいと思います。

日常的に多文化にふれる

――外国語学部で学ぶと、どのような力が身につくのでしょうか。

現代はグローバル化が進んでいます。自分とは異なる文化の中で生きている人々と理解し合い、一緒に生活していく「異文化理解」「多文化共生」が、今まで以上に重要になります。

自分とは異なる文化を持つ人のことをどのようにして理解していくかを考えたとき、ベースとなるのが「相手の言葉を理解する」ということです。島国である日本は、自分たちの文化とは相いれないものを特別視しがちな面がありますが、ひとたび世界に出れば、さまざまな言語や文化が混在している状況が当たり前です。世界のさまざまな国からやってきた教員や留学生も多く在籍する外国語学部は、こうした「世界」を日常的に体験できる場でもあります。

例えば、エレベーターや食堂では、英語・中国語・韓国語のほかにも、ヒンディー語やアラビア語など多様な言語が飛び交っているのが当たり前の光景です。日本人学生と外国人留学生がその国の言葉や英語でコミュニケーションを取るといったことも日常的に行われています。こういう環境に身を置くことで、言葉を通じて「多文化共生」の感覚を身につけることができるのは、外国語学部ならではの特色だといえるでしょう。

※今回の記事では一般的な名称として「外国語学部」としているが、東京外国語大学は言語文化学部・国際社会学部・国際日本学部の三つの学部で構成されている。

山口裕之教授(東京外国語大学言語文化学部長)

 

やまぐち・ひろゆき 広島大学附属高校卒業。東京大学教養学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位修得退学。博士(学術)。専門はドイツ文学、表象文化論、メディア理論。ベルリン自由大学に留学した経験を持つ。