外国語学部と聞くと、語学だけを勉強するイメージが持たれがち。語学はもちろんだが、地域研究も行い、多言語・多文化に囲まれながら、柔軟なコミュニケーション能力が身につけられる。東京外国語大学言語文化学部長の山口裕之教授に、教育内容について聞いた。(安永美穂)

「言葉が好き」な人向け

――外国語学部に向いているのは、どんな人ですか。

外国語を学び続けていくためには、「言語愛」が必要です。ですから、まず大前提として「言葉が好き」という思いがある人に来てほしいですね。高校の英語の成績だけでは、向き・不向きが判断しにくい部分もあります。言葉に対する関心があり、新しい言葉を学ぶことが楽しいと思える人であれば、外国語学部で学ぶ日々はきっと充実したものになると思います。

タイ人ネーティブのタイ語によるタイ文化の授業(東京外国語大学提供)

まずは日本を知ろう

――外国語学部を目指す人が、高校時代にやっておくとよいことは?

外国の人々に向けて日本のことを発信できる人になれるように、まずは日本のことをよく知ってください。日本語で読む力、書く力、考える力を身につけるのに加えて、日本の文化や歴史、政治や経済のことも含めた社会全般に興味を持ち、しっかり学んでほしいと思います。

そのうえで、自分が興味を持っている言語や地域の歴史も学んでおくとよいでしょう。ドイツに興味があるなら、ヨーロッパ全体の歴史を知っておくというように、国ではなく地域単位の広い視野をもって世界史を学んでおくことをおすすめします。

文化や歴史に関する本を

――外国語学部で学ぶための入門書としてお薦めの本はありますか。

『言葉から社会を考える この時代に〈他者〉とどう向き合うか』(東京外国語大学言語文化学部 編/白水社)は、言葉をきっかけとしてどのように学びの視点を広げることができるのかを知るための入門書としてお薦めです。また、『日本をたどりなおす29の方法 国際日本研究入門』(野本京子・坂本惠・東京外国語大学国際日本研究センター 編/東京外国語大学出版会)は、外国の人々に日本について知ってもらうにはどのような切り口があるかについて書かれている本で、日本のことを見つめ直すきっかけを与えてくれる1冊だと思います。このほかにも、自分の興味に合わせて、日本の文化や歴史に関する新書などを読んでみるのもよいでしょう。

※今回の記事では一般的な名称として「外国語学部」としているが、東京外国語大学は言語文化学部・国際社会学部・国際日本学部の三つの学部で構成されている。

山口裕之教授(東京外国語大学言語文化学部長)

 

やまぐち・ひろゆき 広島大学附属高校卒業。東京大学教養学部卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位修得退学。博士(学術)。専門はドイツ文学、表象文化論、メディア理論。ベルリン自由大学に留学した経験を持つ。