教育学部は、基本的に学校教員の育成を目的とした教員養成課程で、卒業と同時に、教員免許が取得できます。教員になるためには具体的にどのようなことを学ぶのか、教育学を学ぶことでどのようなことが身につくのかを、東京学芸大学副学長の佐々木幸寿教授に聞いた。(安永美穂)

1年次から学校訪問

――教育学部の教員養成課程では、どのようなカリキュラムで学ぶことが多いのでしょうか?

大学により違いはありますが、1・2年次には学問を学ぶ上での基礎となる「教養科目」(人権教育、情報、外国語など)や、教育を学ぶ上で基礎となる「教育基礎科目」(教育心理、教育相談の理論・方法など)を学び、3・4年次は教育基礎科目と並行して、「専攻科目」(各教科に関する専門科目など)を深く学ぶのが一般的なカリキュラムです。

実際の教育現場で学ぶ機会は、かつては3・4年次の教育実習のみというケースもありましたが、現在は1年次より学校を訪問して授業参観などを実施する大学も増えてきました。より早い段階から教育現場で児童・生徒とふれ合う中で、自分の適性などを考えられるようになってきているといえるでしょう。

また、大学によっては、学校の教員養成とは別に、情報・スポーツ・多文化共生などのさまざまな知見を活かして学校外から教育を支援する人材や、生涯教育に携わる人材を育成する課程を設けているところもあります。

 

教育実習で実際に授業

――教育実習はどのように行うのでしょうか。

原則として、小学校では4週間、中学校では3週間、高校や特別支援学校では2週間の教育実習が必要となります。教員養成課程では3年次と4年次で教育実習を行うことが多く、たとえば、3年次に大学附属の学校で実習を行い、4年次には、一般の公立学校での受け入れを依頼して実施することもあります。小学校と中学校など複数の校種で実習を行うこともできます。

実習前には、大学の担当教員のもとで、授業をどのように展開するのか学習指導案のつくり方などを学びます。そして、実習中は実習先の指導担当の先生のもとで自分が担当する授業の教材研究や学習指導案の作成に取り組み、それらに基づいて実際に授業を行います。授業後には、授業を見学した教諭や他の実習生たちと意見交換をしながら改善点などを話し合い、知識や技術の向上を目指します。大学のカリキュラムとは別に、実習を行う前の1・2年次のうちに学校ボランティアを行う学生も多くいます。

佐々木幸寿教授(東京学芸大学副学長)
ささき・こうじゅ

 

水沢高校(岩手)卒業。東北大学経済学部卒業。東北大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。専攻は学校法学、教育行政学。岩手県内の公立高校で地歴・公民を教え、野球部の監督を務めた経験を持つ。