国が進める2020年度からの大学入試改革(高大接続改革)のうち、英語民間試験を利用する制度が一転して「延期」となった。現高校2年生などが受ける2021年度入試の内容にどのような影響が予想されるか。(西健太郎)

四年制大学の7割が利用予定だった

今回、延期になったのは、国が認定した7種類の英語民間試験の成績を大学入試センターがとりまとめて大学に提供する制度「大学入試英語成績提供システム」。文部科学省が10月に公表した調査によると、四年制大学の71%がこの制度を何らかの形で利用する予定だった。国立大の95%、公立大の86%、私立大の65%が利用を予定していたという。短大も30%が利用を予定していた。

利用方法は主に3種類だった

国立大学協会がまとめた英語民間試験の活用法の「参考例」

大学の利用方法は大きく3つに分けられる。

1つ目は、受験生の英語民間試験の成績が一定以上であることを、出願の条件としている場合だ。国は、制度の対象となる民間試験の成績を「A1」「A2」「B1」など大まかに6段階に分けた表を示しており、大学は「『A2以上』を出願の条件にする」といった要件を示している。

2つ目は、英語民間試験の成績を点数化して、選抜に利用する場合だ。大学は「A1は〇点」「A2は〇点」といった換算基準を決め、大学入学共通テストや、個別試験の点数とあわせて合否を決める考えだった。

3つ目は、英語民間試験の成績を出願資格として、かつ点数化して選抜にも使う場合だ。

予告していた出願資格や選抜方法の見直しが必要に

中でも、国立大は、全大学でつくる国立大学協会が、英語民間試験を利用することを「基本とする」という指針をまとめたこともあり、民間試験を必須とする入試を予定していた大学が大半だ。国公私立を問わず、「大学入試英語成績提供システム」多くの大学が既に予告している出願資格や選抜方法の見直しを迫られそうだ。

「共通テスト」の英語は存続

ただ、センター試験の後継として21年1月から始まる大学入学共通テストでは、大学入試センターが作問する英語の試験が実施されることが決まっており、受験生の英語力を測る共通試験がなくなる事態が避けられそうだ。

一方、私立大の中には独自の英語試験も、大学入学共通テストの英語も使わず、英語民間試験でのみ英語力を測る入試方針を予告していた大学もある。何らかの見直しが必要になりそうだ。

大学が独自に民間試験使う方法も、各大学の方針に注目を

注意が必要なのは、国の「大学入試英語成績提供システム」を使わなくても、21年度入試でも各大学が独自の判断と基準で英語民間試験の成績を大学入試で使うことは可能な点だ。これまでも英語民間試験を独自に選抜に利用していた大学もある。ただ、民間試験の問題点が多く指摘されて「延期」になった経緯から、新たに民間試験を利用する予定だった各大学は慎重に利用の可否を検討することになるとみられる。現2年生は、各大学が今後、発表する21年度入試の詳細を確認することが大切だ。