本田琴音さん(神奈川・横須賀総合高校3年、美術部)は、油彩で描いた絵画作品が美術大会で高く評価されている。3年次は「高校生国際美術展」(世界芸術文化振興協会主催)で文部科学大臣賞を受賞し、全国高校総合文化祭の美術・工芸部門には神奈川県代表の一人として参加した。どのような創作活動をしているのか聞いた。 (文・写真 中田宗孝)

本田さんが主にモチーフとするのは想像の世界だ。有名な印象派画家の絵画、目に焼き付いた景色、カメラに収めた草木、昔から好きなアニメや漫画……。自分の感性に響いたモノ・コトで想像力を育み、一枚の絵に表現する。

新作を描き進める本田さん。「同系色だけでどこまで表現できるのか挑戦しています」

色づくりは直感で

8月、「高校生国際美術展」で文部科学大臣賞を受賞した作品「お返事くださいな」(右写真)は、「動物と人間がコミュニケーションできる、あったらいいなと思う世界を描きました」

鑑賞者の目に飛び込んでくるカラフルな色使いも彼女の個性の一つ。「まずはパレット
に全色出してみます。直感に頼り、さまざまな色を混ぜて偶然生まれた、現実にはないよ
うな明るい色を使う。写真加工に近いかもしれません」

作品の中には、本来の毛色と異なる色で描かれた動物もいる。「写実的ではなくても成立するのが絵画の良さ」とほほ笑む。

最近は6人組ロックバンド「UVERworld」をよく聴いている。ロック系の音楽を聴きながら絵を描くと気持ちが盛り上がり、創作のモチベーションにもつながるという。

本田さんの作品「お返事くださいな」。コミュニケーションの象徴としてポストと手紙を送る高校生を描いた

考え込むより先に行動

美術部入部後しばらく、絵が未完のままになってしまうことが多く、悩んだ。「終わり
が見えなくなっていた。絵ってどうすれば描き進められるんだろう、と……」。苦悶の末、どうにか1枚の絵を仕上げて前へ進めた。「考え込むより先に筆を動かしちゃえと、吹っ切れた部分はある。私の場合は、無心で描いたほうが、キャンバスに多彩な色がのってくるんです」。今は、心から満足した時に筆を置き、作品の完成としている。

制服のワイシャツのあちこちに付く「もう洗っても落ちない(苦笑)」という絵の具が、創作活動に没頭する日々を物語っている。

同部は、文化部の全国大会「全国高校総合文化祭」に15年連続で出品する強豪だ。さらに今年の高校生国際美術展では、学校として最優秀校賞に選ばれるなど、多くの大会で好成績を残す部員が集う。そんな環境で 創作活動に打ち込むことも「自分の画力を伸ばせた理由の一つ」と話す。「特に同じ3年生部員には『負けてられない』という気持ちがあります。みんな、個性ある絵を描くので『羨ましい』と感じつつ、私も……となる」。もちろん、創作を離れると、気の置けない友人たちだ。

本田さんが使っている画材

新しいタッチに挑戦

朝時間に創作する部員もいるが、本田さんは「朝に弱い(笑)」ため、放課後から19時頃まで美術室で創作に励む。美術部の活動は原則週7、月曜日は自由参加。受験生の本田さんは美大進学を目指して美術系の予備校に通う毎日を送っている。現在、絵の創作は予備校で行うことの方が多い。「これからもひたすら絵を描き続けたい。もっと絵の描くための基礎力を高めたいと思っています」

現在、大会に出品する新作を描き進めている。ブルーを基調にした風景がキャンバスに広がり、持ち味のカラフルなタッチは影を潜める。「同系色だけでどこまで表現できるのか、この絵で挑戦しているんです」

Q&A 好きを仕事にしたい

——好きな食べ物は?

うどんが大好物です。

——美術以外で得意な教科は?

世界史。国々の歴史を追っていくのが楽しいです。特に、中世・ヨーロッパの歴史が好きです。

——将来の夢は?

絵を描く仕事に就きたいです。好きを仕事にできたらいいなと思います。