親子関係に悩んだときは、どのような考え方をしてどう対処すればよいのか、発達心理学を専門とする菅原ますみ教授(お茶の水女子大学)に聞いた。(安永美穂)

Q.父は機嫌が悪くなると語気を荒げたり、物を投げたりします。そのたびに私はスマホに夢中なふりをしてやり過ごしているのですが、どう対処するのがよいのでしょうか?(2年女子)

A.一緒に過ごす時間を減らし、親との境界線を意識しよう

「こういう事態が始まったのはいつからなのか」「なぜこうなっているのか」を振り返ってみて、幼少期からずっと続いているようであれば、父親の態度をすぐに変えることは難しいかもしれません。そのため、勉強はできるだけ図書館でやるなど、まずは家で荒れている父親と過ごす時間を減らして、具体的な被害を少なくできるようにしましょう。

心にシャッターをおろす

 

心の持ち方としては、父親に対して「荒々しい態度をとるのをやめて」と願う気持ちのほかに、「それだけいろいろなストレスを抱えながらも、仕事をしてお金を稼いでくれてありがとう」というポジティブな気持ちも抱くことができると、その気持ちは親にも伝わるものです。

そのうえで、父親が抱えているストレスにこれ以上巻き込まれずに済むように、心に透明なシャッターを下ろすイメージで、「お父さんがこういう態度をとってしまうのはお父さん自身の問題であって、私が引き受けなければならない問題ではない」という境界線を意識することを心掛けましょう。

スクールカウンセラーなどの専門家に相談を

このような問題が続いていて苦しい場合には、スクールカウンセラーなど、状況を分析したり理解してくれる専門家や信頼できる大人に相談してください。ずっと自分の中でフタをしていた思いを話してみると、気持ちが楽になりますし、事態を客観視できるようになることも多いものです。そのうえで、今後どうやって対処すればよいか、一緒に考えてもらうようにしましょう。

こういう事態は1回やり過ごすだけでもかなりのエネルギーが必要で、こころがとても疲れます。ハーブティーを飲む、好きな音楽を聴くなど、自分なりのリラックス法を見つけておくことも大切です。

菅原ますみ教授

 

すがわら・ますみ お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授。専門は発達心理学、発達精神病理学。国立精神・神経センター精神保健研究所 家族・地域研究室長などを歴任。