大船(神奈川)男子バスケットボール部主将 佐藤雄基(3年)

いつも堂々と物を言う姿に迷いはない。勝ってみんなで喜びを分かち合い、バスケットボールを心から楽しみたいからだ。大船(神奈川)男子バスケットボール部主将・佐藤雄基(3年)=神奈川・旭が丘中出身=に、主将としての心構えを聞いた。 (文・田中夕子、写真・東憲吾)

練習中の体育館に、げきが飛ぶ。

「しっかり足を動かして! もっと腰を落とせ、腰を!」

一瞬でピリッと空気が引き締まる。山中一将(3年)=神奈川・村岡中出身=は「怒られることもあるけれど、一声でチームがまとまる」と話す。 小学生のころからバスケ一筋。しかも小中高の全てでキャプテンを任されてきた。

「チームスポーツなので、主将は何事にも率先して頑張れる人じゃなきゃいけない。口で言うだけじゃなく、プレーで示すことも大事だと思っています」 1年時からレギュラーとして活躍しているが、「みんなの代表で出ている」という重みを感じながらプレーを続けてきた。

昨年10月に引退した3年生たちから主将に任命されたのも、そういう姿勢を買われたためだ。 忘れられない一戦がある。1年生の時だ。県大会へとつながる地区予選の初戦で、強豪のアレセイア湘南と対戦した。相手チームには2㍍を超えるセネガルからの留学生がおり、戦前の評判は圧倒的に相手が高かった。「体格で劣るとはいえ同じ高校生。ましてや同じ1年生……」。心に火がついた。

 

「強いと言われていたけれど、気にしていたら自分のモチベーションも下がってしまう。どんな相手でも自分のやるべきことをやろうと思って、必死でした」 徹底したディフェンスで相手の得点チャンスをつぶし、チームに流れを呼び込んだ。試合は69-48で勝利。部は22年ぶりの県大会出場を果たした。勝つことが楽しい。だからチームが勝つためなら、何でもやる。「嫌われたらどうしようとか気にしていたら、主将はできない。みんなが嫌がることを言い、やる立場なので」と主将の役割に徹する。

言い過ぎたときはフォローも忘れない。丸子拓海(2年)=同・港南台一中出身=は「ディフェンスができていない時に『しっかりやれ』と言われたけど、その後で『オフェンスはよくできているぞ』と褒めてくれた。一層やる気になった」と話す。

クリスマスには、お手製のチーズケーキをみんなに振る舞う。大人顔負けの気遣いができる一面もある。

「大変なことよりも、やりがいを感じることばかり。悔しい思いを何度もしてきたので、先輩たちの思いも背負って、県大会で勝ちたい」 今日も頼れる主将が「声」と「心」でチームを引っ張る。ただ一つ、勝利のために。

さとう・ゆうき 1995 年12 月14 日、神奈川県生まれ。父の影響で2歳からバスケットボールに触り始め、小学1年生からプレーを始める。これまで全てのポジションを経験し、高校ではセンターを務める。183㌢、77㌔。